"通称"愛されマネージャーの日常second【番外編】

お前は俺の＝あなたは私の ページ24

キスやハグ等の行為は、恋人同士の典型的な愛情表現だと思う。

キスマークという、いわば所有印もその内の一つらしい。


かく言う私も、一也にキスマークを付けられた事がある。

しかし思い返して見れば、私から一也に付けたことはない。


別に進んで付けたいというわけではないけれど、

キスマークは誰かに見られてしまいそうで結構恥ずかしい。

そんな思いを私ばかりがするのは不公平だと思った、ただそれだけ。


だが、私には自分から『キスマークを付けさせてほしい』と言えるような勇気は、

生憎のところ持ち合わせていないわけで。

じゃあどうするのか。思い付く手段はただ一つ。



『一也、目閉じて』


「え、何で？」



毎度の如く私の部屋に来た一也にそう言うと、

一也は案の定不思議そうに目を瞬かせた。


その手段とは、強引にごまかすこと。

すぐバレるとは思うけれど、直接頼むよりはずっと気が楽だ。

そう思った私は『いいから早く』と一也を催促する。


一也は怪訝そうにしながらも目を閉じた。



『...私がいいって言うまで、絶対に開けたらだめよ』


「お、おう...？」



そう念押しして、私は目を閉じている一也の首元、

丁度服に隠れる部分に顔を近付けた。

爽やかなシャンプーの匂いを鼻先に感じながら、恐る恐る日に焼けた首元に吸い付く。


一也はピクッと身体を揺らしたけれど、止める気配はない。

私は初めてで手こずりながらも、何とかキスマークを付けようとする。



「っ...あー、もう無理だわ」


『あ、ちょっ...！』



ふと一也がそう呟いたかと思うと、両肩を押された私はそのまま床に倒れ込んだ。

その上に、眼鏡の奥で目をギラつかせている一也が覆いかぶさる。


その獣のような表情に、私は息を詰まらせる事しか出来なかった。

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