"通称"愛されマネージャーの日常second【番外編】

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『ねぇ、一也』


「悪い、監督に呼ばれてんだわ」



私が声をかけると、一也はそそくさと走って行った。

いや、逃げたと言った方が正しいかもしれない。

しかも、行ったのは監督がいる方とは別方向。


また何か企んでいるのかと、私は一也の背中を見つめながら察した。

この時はまだ、それだけで済んだ。

しかし私は、自分が思っている以上に一也に溺れていたらしい。




コン、コン、コン、コン...


人刺し指で机を叩きながらイライラと眉を寄せる私を見て、唯が苦笑いを浮かべた。



「いつにも増して機嫌悪いね」


『別に』



私のの口から出たのは、自分でも驚くくらい低い声。

"別に"と言いながらも、声色は正直だった。



「御幸先輩ですか？」


『...最近、一也がよそよそしい。というか冷たい気がする』



私が声をかけてもはぐらかすことは愚か、

私の前で笑うことも減り、今では夜に部屋に来ることもなくなった。

いつも隣で食べていた朝食と夕食もバラバラだ。



「まーた何か企んでんじゃないの？気にしない方がいいって！」


『気にしてない。むしろ静かでいい』


「そんな様子で言われても説得力ないよ？」



あぁもう、イライラする。

私は一つ大きく息をつくと、ガタッと椅子の音を立てて立ち上がった。



「どこ行くの？」


『まだ時間あるし、室内で思い切りボール打ってくる』



そう言い捨てると、私は二人の制止の声も聞かずに食堂を出た。


丸ネットとボール、ティースタンドを出し、バットを構える。



『ムカつ、くっ！』



一也への怒りをぶつけるようにバットを振る。

気持ちのいい音が室内練習場に響いた。


何で急にそんな態度取るようになったの。何企んでるの。

アイツに聞きたいこと、責めたい事なんて言い出したらキリがないほどある。


どうして、どうしてと自問しながらボールを打っていると、

やがて一つの可能性が私の頭に浮かんだ。


もし企んでいるのではなく、私に冷めたのだとしたら？

何が原因なのかは分からないが、一也は私の事を嫌いになったのだろうか。

...また捨てられる？また独りになるの？


そう思うと自然と怒りは収まり、代わりに深い悲しみが私の心に広がった。

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