"通称"愛されマネージャーの日常second【番外編】

キャッチボール ページ16

『...これ』



ある日、部屋を片付けようと物の整理をしていた時のこと。

棚の中にしまい込んだ物を要るものと要らないものに分けていると、

奥から懐かしいものが出てきた。


野球ボールより二回り程大きいソフトボール。

日付と号数が書かれたそれは、私が県大会の時に打ったホームランボールだった。


もう五、六年以上前の物なので、文字も随分薄れてしまっている。

そういえば、ソフトボールを触ること自体久しぶりな気がする。



『......』






「それで急にキャッチボールしたいなんて言い出したのか」



私にボールを返しながら、一也はそう言った。

投げたボールは、勿論さっきのソフトボールだ。

大きさが違うからか、一也の球速も落ちている気がする。



『最近してなかったからっていう理由もあるけど』



そう言って、一也が胸元に構えたミットにボールを投げ返す。



「下投げの速さ、どのくらいだったっけ？」


『忘れた。もう関係ないし、そんなにいい思い出もないから』



あの頃は三人からの虐待が一番酷い時期だった。

刺されたり切られたりした腕の傷跡は、多少薄くはなったものの、まだ消えていない。

腕だけに限らず、腹部も、足も。


小学生だから当然つまらないいじめもあったし、チーム内でも孤立していた。

別にそれが嫌だったわけではないけれど、試合にまで影響するのは迷惑だった。

私の口下手も原因の一つで、バッテリー間に亀裂が入るのは当たり前だったから。


...そういえば、あの頃はキャッチボールの相手さえいなかったな。

その事を思い出して、私は無意識にボールを投げるのを止めた。



「...もう終わった事だろ。

　青道にはそんな奴いない。だから、そんな悲しそうな顔すんな」


『別にしてないし。少し思い出しただけだし』


「どこに意地張ってんだ...って、危ねっ！？」



一也の言葉にムカついて、私は思い切り一也へボールを投げた。

一也は持ち前の反射速度で咄嗟にボールを取った。当たればよかったのに。



『言われなくても、最初から気にしてないわよ』


「素直じゃねぇなぁ〜」



一也とのキャッチボールが一番楽しい...なんて素直に言ったら、調子乗るくせに。

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改めて、あーゆー様、リクエストありがとうございました！

こんなに暗くする予定ではなかったんです。

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