"通称"愛されマネージャー【御幸一也】

第百七十九話 ページ1

日は流れ、準々決勝当日。


王谷の投手はフォーク主体なこともあり、初回からどんどんカウントを稼ぎに来ている。

向こうの立ち上がりは良いのに、こちらの立ち上がりは微妙。


いや、立ち上がりは良かった。ツーアウトまで難無く来れたから。

しかしその後の球で、沢村のリズムが崩れた。


ボークは仕方ないとしても、最後の一点は頂けない。

御幸が何を要求したのかは分からないが、引きずらないといいけど...。


二点差のまま四回裏に突入し、東条、金丸、麻生の連携で一点を返した。

沢村は相変わらず打てなかったけど。


でも、試合を見て確信した。

昨日渡辺が言っていたことは本当だったってこと。


それはみんなも同じで、攻撃が回って来ると、

ストレートに狙いを絞って守備の手薄な方へ打ち分け始めた。


それでも向こうの対応は早く、前園まで繋いだもののゲッツーで終わってしまった。

けど、ここで逆転出来たのは大きい。


沢村も打たれはしたものの、何とか粘ってくれている。

これにタイミングをずらす変化球があればなおいいけど。


六回裏、ランナー一、二塁のピンチ。

そこで沢村が投げたのは...。



貴『...！？』



ストレートじゃない。

完全に打者のタイミングをずらした、チェンジアップ。


いつの間に...。


それで流れを掴んだのか、七回、八回三者連続三振で抑えた沢村。

攻撃も上々で、春市がホームランを出したことには驚いた。


そんな絶好調な沢村を下げるはずもなく、最終回も沢村がマウンドに上がる。

そこから試合が決まるのは早かった。


テンポよくアウトを取り、試合が終了した。

結果は六対二。


試合内容を見ても、最初を抜けばかなりいい。



片「沢村の球数は？」


貴『百九球、その内ヒットは三本です』



やはりチェンジアップが効いたのだろう。

でも、誰が沢村に教えたのだろうか。

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