腐男子は見るだけで結構です【オリBL】

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少しまだ寒さが残る春。
手先が少しほんのりと桜色に染まる。息を吐き暖めていると、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。







「あ、冬木くんだ」

『えっ、秋川先輩？』








目を見開く。
まさか通学中に先輩と会えるなんて。朝からかっこいいな。

秋川先輩ってこの電車だったんだ。いつも会わないから知らなかった。








「冬木くんはこの時間帯にいるんだ。俺、いつもはこれよりもずっと遅い時間に乗ってるからなー」







通りで今日初めて見たんだな。
秋川先輩の周りには謎のキラキラが出ていて、周囲の人々もチラチラと秋川先輩を見る。流石イケメンだ。

そんなイケメンが笑うと可愛いんだから、最高過ぎだろ。その笑顔に今にも鼻血を吹きそう……。








「人、誰もいないね。いつも一人なの？」

『そうっすね。でも、たまにめちゃくちゃイケメンの会社員の人がいます！先輩にも見てほしいくらい……』









見てほしいくらいというか見てくれ。
出会ってほしい。

イケメンでなんでもできる年上系が高校生に恋してそこから恋愛が発展するのをとてつもなく見たい。BL本書けるぞこれ。


しかし、秋川先輩はあまり興味を示さない。







「へぇ。冬木くんはその人とは何か話すの？」

『え、話したことないですけど』

「そっか」








さっきまでとの声とは違いワントーンくらい低い声。しかし、直ぐにいつもの落ち着いたイケボに戻った。

何かあったのか？と少し気になったが、にこりとこちらを見て笑う秋川先輩の尊さに声が出なくなった。







「じゃあ、折角だから俺も今度からこの時間帯にしようかな。寝坊するかもしれないけどね」








照れた顔をする先輩。
寝坊とか可愛いかよ。何その照れた顔。それを春宮が見たら襲われるぞ。


ていうか、先輩がこれから同じ時間帯で一緒に登校することができるなんて、毎日が楽しみすぎて後から不幸にならないか心配だ。









「あのさ、今度からAって呼んでも良い？」

『全然！どうぞ』

「やった！！嬉しい」








名前で呼ぶことくらい先輩だし、俺みたいなモブに対してわざわざ許可も要らない。寧ろ俺が喜びたい。心の中ではサンバ踊ってるよ。

こんな事で舞い上がってる気持ち悪い後輩だと思われたくないけど、自然と口角が上がってしまう。


懸命に己の唇を固く閉じていると、俺を見つめていた秋川先輩と目が合った。
首を傾げると、秋川先輩は目を細めた。








「Aは可愛いね」









可愛いのは春宮や先輩の方だと思う。






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