Case.4 ページ48
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『そういえば、二宮先生って異動になるって噂ありませんでした？』
「あー、あれね。なしになったの。俺もちょっと驚いたけど」
『やっぱり噂本当だったんだ』
「ん、でもアイツを辞めさせちゃうからさ。俺がここに残んないといけないの」
『辞めさせちゃう？』
「ん、アイツ、妊娠してんのよ」
『…へぇ、そうなんですか』
「ふっ、驚かないのね」
『え、あ、いや…そんなに、先生とか、名前くらいしか知らないから、その』
「まあそっか、Aは普通科だしアイツと関わりないもんな」
『そう、ですね…』
「まー、それでさ、アイツはそのままギリギリまで仕事したいって言ってたんだけど。俺としては落ち着くまで仕事辞めちゃって、子供おっきくなってから復帰でもいいんじゃねーのって話をしたわけ」
『へぇ…』
「命に関わるほどじゃないんだけどさ、アイツちょっと身体弱いとこあるんだよ。まぁ…ちょっと、心配じゃん？』
そう言って笑った二宮先生の顔は、初めて見た表情だった。
あ、この表情、パパに似てる。
誕生日にプレゼントを貰って、嬉しくて、ありがとうってパパに言うと、パパはいつも私より嬉しそうな顔をして笑ってくれる。
優しくて、あったかくて、
家族を思う、大人のオトコの人の顔だ。
「その影響でさ、俺はもうちょいここに残んないといけないわけよ。しかも主任になるかもしれないんだよね」
『すごいじゃないですか。それって、出世？』
「んー、出世、まぁ、出世かなぁ。責任増えるだけじゃない？はぁあ、俺責任ある仕事イヤなんですけどねぇ」
『うわぁ教師にあるまじき発言』
「ハッ、教師にあるまじきことコソコソやってきたんでそれくらい別になんとも？」
揶揄うように先生の手が私のスカートの裾をぺらりとめくった。思わず軽く先生の手をぺしんと叩いた。
『サイテーですよ』
「あら、暫く経ったうちにガード固くなったの？」
『…今日、女の子の日なんで』
咄嗟の嘘だけど。でも今日は、とりあえず今日は、先生には触られたくない。そんな気分だ。
二宮先生はお構いなしの様子で両肘を立てて両手を顎に当て、まさにぶりっ子のポーズで私を上目遣いで見上げた。アイドルかよ。
「ふぅん、女の子の日でもやりようあるのよ？教えてあげよっか」
『そうやっ「A！おまたせ！！」
そのとき、大声と大きな物音で雅紀が図書室の扉を開けた。扉を強く閉める音で、二宮先生のちいさな舌打ちの音はかき消された。
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ぶつぶつとひとりごと（2020.08.11）→←Case.4
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かなで(プロフ) - なり。さん» ありがとうございます！悪い言い方だと「尻に敷かれる」なんて言いますが（笑）先生をコントロールしたい婚約者、そして雅紀くんの行方も注目していただけると嬉しいです！ (2020年8月11日 22時) (
レス) id: fab795035e (このIDを非表示/違反報告)
なり。(プロフ) - わぁ!!更新凄く嬉しいです！ コントロール、パワーワードですね。愛する人を、他人を操作、支配できるのか、出来ないのか。次回を楽しみにしてます！ (2020年8月3日 11時) (レス) id: a09df3f8ec (このIDを非表示/違反報告)
かなで(プロフ) - 優羽さん» そう言っていただけると書き手冥利に尽きます。これからも楽しんでいただけるものを作れたらと思います。コメントありがとうございました(^^) (2018年12月12日 14時) (レス) id: 44386e0598 (このIDを非表示/違反報告)
優羽(プロフ) - どのお話も楽しく読ませていただいてます。中でもcase3はリピ読みしてまして、冒頭はクスッと笑えるお話だったのに段々切なくなって涙しました。バッドエンドなのに清々しい。素敵なお話を読ませていただき感謝してます。 (2018年12月1日 2時) (レス) id: 1bf95b0dcc (このIDを非表示/違反報告)
奏(プロフ) - なり。さん» 想像でしかないのですが私の中では、向こう側へ渡った人たちは悲しくてもきっと残された人の幸せを願ってくれると思うんです。願うことしかできなくなってしまうというか…。こちらこそいつもありがとうございます！なり。さんにまた喜んでいただけるよう頑張ります！ (2018年11月27日 14時) (レス) id: 44386e0598 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かなで
| 作成日時：2018年2月9日 12時
