Case.4 ページ46
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「…もうこんな時間なのね、」
図書室の壁掛時計をちらりと見たその人は、近くに置いていた鞄を持って立ちあがった
「もうすぐ、彼が来ると思うから…。ひとつ、あなたに大人に近づけるチャンスをあげる」
『…チャンス？』
「わるーい大人に、ちゃんと自分から近寄らないでって言うこと。負けずにNOをきちんと言えることで、大人への階段を1つ登れると私は思うかな」
『NOを言う、』
「…ほんと、ごめんなさいね。突然。話せてよかったわ。帰り、気を付けて帰ってね？」
『あ、はい…』
「さようなら」
『……さようなら』
綺麗なその人は、夕日に影を残してふわりと図書室を出ていった。
それからどのくらい経ったのだろう。
聞き慣れた足音が図書室に近づいてきて、私はハッと意識が戻った。
「わりぃ、遅くなった…あれ？Aひとり？」
『はい。雅紀は補修で…』
「くはっ、またかよアイツ」
二宮先生は「あいついつんなったら補修から抜け出せんのよ」と笑いながら、いつものように白衣をバサリと脱いだ。
最近は廊下ですれ違うことも殆どなかったし、会うことすらすごく久しぶりなのに、二宮先生はまるで昨日も私と会っていたかのようにナチュラルだ。
「この量、お前ひとりでやったの？」
『あ、えっと、はい、まぁ…』
「ふぅん、プロだな」
『…いやですよ、こんなプロ』
「ま、わかるけどね。俺も好きだし」
『へっ？』
一瞬ドキッとしたけれど、二宮先生の目線は机の上にある本に向けられていた。
「単純作業ってやつ？こういう黙々とやるの。俺も得意っつーか好きかな。なんか、無心になれるよね」
『そうですね』
「どうしたA、なんか今日元気がな……ん？」
先生が手を伸ばした先にあったラベルシールは、中途半端に数枚だけがなくなっていた。私の手元には別のラベルシールがある。
「…誰か、来た？」
少し眉間に先生の問いかけは、まるで誰が来ていたのか分かっている口ぶりだった。
『えっと、さっきまで、二宮先生が来るちょっと前に、2〜3分だけでしたけど…
風間先生がいて…』
「風間？なんで？」
『今日、日直だったんですけど、日誌のとこに名前書き忘れてたみたいで。それを持ってきてくれて…そのときに面白そうだなって何冊か手伝ってくれたんですよ』
「…ふぅん、そ。なんなら全部やってけよって感じだな？」
『ふふ、図書委員関係ないのにそんなの頼めませんよ』
私はまだ、子供なんだ。
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かなで(プロフ) - なり。さん» ありがとうございます！悪い言い方だと「尻に敷かれる」なんて言いますが（笑）先生をコントロールしたい婚約者、そして雅紀くんの行方も注目していただけると嬉しいです！ (2020年8月11日 22時) (
レス) id: fab795035e (このIDを非表示/違反報告)
なり。(プロフ) - わぁ!!更新凄く嬉しいです！ コントロール、パワーワードですね。愛する人を、他人を操作、支配できるのか、出来ないのか。次回を楽しみにしてます！ (2020年8月3日 11時) (レス) id: a09df3f8ec (このIDを非表示/違反報告)
かなで(プロフ) - 優羽さん» そう言っていただけると書き手冥利に尽きます。これからも楽しんでいただけるものを作れたらと思います。コメントありがとうございました(^^) (2018年12月12日 14時) (レス) id: 44386e0598 (このIDを非表示/違反報告)
優羽(プロフ) - どのお話も楽しく読ませていただいてます。中でもcase3はリピ読みしてまして、冒頭はクスッと笑えるお話だったのに段々切なくなって涙しました。バッドエンドなのに清々しい。素敵なお話を読ませていただき感謝してます。 (2018年12月1日 2時) (レス) id: 1bf95b0dcc (このIDを非表示/違反報告)
奏(プロフ) - なり。さん» 想像でしかないのですが私の中では、向こう側へ渡った人たちは悲しくてもきっと残された人の幸せを願ってくれると思うんです。願うことしかできなくなってしまうというか…。こちらこそいつもありがとうございます！なり。さんにまた喜んでいただけるよう頑張ります！ (2018年11月27日 14時) (レス) id: 44386e0598 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かなで
| 作成日時：2018年2月9日 12時
