思い出の四 ページ4
「あれ、今でもちゃんと持ってるよ。あんまりにきれいで、使ってないのだけれど」
肩をすくめながらそう言うと、雅ちゃんはクスリと笑う。
「……そうそう使ってないものと言えば……」
「……」
その人酷く暑い夏の日だった。
本当に暑くて、舞の練習どころじゃなかったわね。
着物でいるウ事さえも辛いくらい。
「……あつい」
その呟くを聞いてか、雅ちゃんは急に立ち上がり、奥の部屋から何かを持ってきた。
「誉さん!うちわを作りましょう!」
いつもは真面目な貴女が言ったものだから、すっごくびっくりしたわ。
暑さにやられたんじゃないかって。
でもその時の私もどうかしてたわね。
「そうだね、これで暑さを解消できるかも……!」
そして始まったうちわづくりよ。
勿論、そんな紙を作るからとかじゃないわよ?
木に紙を貼るだけの単純な作業。
だけどこれが面白いくらいにうまくいかなくて……。
「誉さん!そこはみ出しています!」
「雅ちゃんもそこちょっと紙が薄いよ」
作り終わるのに数時間かかったっけ。
出来たころにはもう、お日様は沈んでいて……。
「なんて無駄な時間を過ごしたの。て言ったよね」
「ええ。最後には誉さん、凄くこっていましたし」
「それは雅ちゃんもでしょ?覚えてるんだからね、あの柄」
「あらそれは私だって」
軽い言い争いをして、私達はなんだか込み上げる笑いを我慢せずに吹き出した。
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作者名:水母 | 作者ホームページ:
作成日時:2018年3月22日 20時