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倒れ込んだヒロト兄の頭を撫でようと、触れた時
ビビビｯ…と私の中を何かが走った。
私は思わず手を離した。
貴「…声が聞こえた…？」
あの一瞬、眠ってるはずのヒロト兄の声が聞こえた気がした。
“Aは俺たちの妹だから”
私はもしかして…と思って、右隣で寝ているリュウジ兄の頭に触れた。
“A…目を覚まして。また笑顔をみせてよ”
貴「……みんなの声が聞こえる…」
何かリミッターみたいなのが外れたのかな？
その後もシロ兄に触れればシロ兄の声が、修也兄に触れれば修也兄の声が聞こえた。
今までは泣いている時にしか聞こえなかった声が
触れるだけで聞こえるようになった。
良いこと…なんだよね？
成長したってことなんだよね…
貴「…心の声なんて聞こえなくていいけどね…」
昔の記憶が脳裏をよぎった。
色んな家に回されていた時…聞こえた声は、
私の存在を拒む言葉ばっかりだった。
兄たちみたいに優しい人たちばかりじゃないから…
天馬たちに触れたからどうなるのかな…？
みんなの本心が知れるけど…怖いな…
私は、小刻みに震え出した手にグッと力を込めた。
……ﾊﾟﾘｨﾝｯ＿
貴「？！」
棚の上にあった花瓶が落ちて割れた。
誰も触れてないし、地震も起きてない…
考えられる理由はひとつしか思い浮かばない
貴「……ｯ」
私だ。
私が割ったんだ…
それしか考えられないよね…？
その時私は気づいた…
自分から力が漏れ出していることに。
このままじゃ…兄たちを傷つけちゃうかもしれない…
だって私は何も望んでないし、花瓶を壊せなんて思ってもないｯ
幸運にも、花瓶の割れた音でも兄たちは目を覚まさないほど深く眠っていた
もしかしたら私の力でみんなが眠ってるんじゃないかと思った
このまま目を覚まさなかったらどうしよう？！
このまま死んじゃってたら…？！
私のせいで…私の力のせいで…！
私が力をコントロール出来ないばかりにｯ
そう思えば思うほど、また体の内側にフツフツと湧いてくる
ダメだよｯ…兄たちだけは、傷つけたくないｯ
貴「行かなきゃｯ……」
私は震える体を起こして、窓から外へと飛び出した。
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作者名：猫まる | 作者ホームページ：
作成日時：2023年3月21日 3時
