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*小さな演奏会〜var9〜【ベトside】 ページ33

ヴォルフのきらきら星が終わり、ついに俺の番が来た。

あんなきらきら星を見せつけられた後、俺はどうしろというのだ。

しかし、終わったものに文句を付けても意味がない。

俺は覚悟を決め、ステージへの一歩を踏み出す。

隣でショパンが俺の袖を引いた。

さされたとおりに後ろを見ると、ヴォルフがくちぱくで俺にしかわからないようにあることを伝える。

俺はほほ笑む。

「Dass Sie wissen(分かっているさ)」

ふう、と息をつく。

鍵盤に手を乗せる。

初めが肝心だ。

第一楽章は甘く、そして情熱的に。

嫉妬と狂おしいほどの愛おしさをここまで表現できる俺の曲はこの熱情しかない。

表現できる限りの嫉妬をこの一楽章に詰め込む。

この楽章は嫉妬の楽章だ。

重く、激しい一楽章の次は、甘く、何か安らぎを覚える二楽章。

俺は間髪いれずに二楽章に移る。

三楽章からなるこのソナタを一曲のピアノ独奏曲へ。

それが俺が確立した新しいピアノソナタだ。

この二楽章で小娘には少し気を抜いてもらわねば、この後の三楽章の激しさに耐えられないだろう。

甘く、口説くように。

俺は、旋律を紡ぎだす。

そして、勝負の三楽章。

一楽章よりも激しいこの旋律に、今まで抑え込んできた狂ったような俺の熱情を注ぎ込む。

そうさ。

俺はヴォルフのように好きな女の前でもいつも通りの行動なんてできない。

ずっと陰から見て、はらわたを煮え繰り返している。

ずっと後悔して、後悔して。

ずっと嫉妬して。

ずっと勇気のない自分にイラついて。

けれど、この思いは捨てれない。

この思いは本物だから。

だから、俺は。

この熱情を選んだ。

この熱情を、まだまだ子供の小娘にささげることに決めた。

最後まで、もてる情熱で、この曲を弾き上げる。

そう。

俺の熱情を。

最後の最後に。

小娘にたたきつけた。

**********

ステージを降りると、なぜかシューベルトとリストに連行された。

「直前にモツになんて言われたの?」
「直前にあの悪魔に何を言われたのですか?」

「ああ。それはだな。」

俺はあの言葉を思い出して、思わず口角が上がった。

「Lassen Sie Leidenschaft(君の熱情を聞かせて)だ。」

ヴォルフ。

お前というやつは。

本当にお前の弟子になれたらよかった。

*****

シューさんとリッちゃんの演奏を飛ばしてすみませんでした!

ちなみに、アルファベットは二人の故郷の母国語のドイツ語です!

*小さな演奏会〜var10〜【歌苗side】→←*小さな演奏会〜var8〜【モツside】



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ヒメちゃん - モツはかわいいし、ベトはなんかツンデレ。なんかたまらないわ。クラシカロイド。(* ∀ *) (2018年9月23日 15時) (レス) id: 5f6a8c1781 (このIDを非表示/違反報告)
愛羅♪(プロフ) - あんころもち(●´ ∞`●)さん» ありがとうございます!楽しみにしていてくださいね〜!ズバリお聞きします!誰推しですか? (2017年8月20日 20時) (レス) id: 79571655d4 (このIDを非表示/違反報告)
あんころもち(●´ ∞`●) - うおおおお! なんていい子なんだモツはーーー!! ますますモツが好きになりました! 続編楽しみにしてます! (2017年8月20日 18時) (レス) id: 71908c4cef (このIDを非表示/違反報告)
愛羅♪(プロフ) - あんころもち(●´ ∞`●)さん» さあどうでしょう!これからも楽しみにしていただけたらとてもうれしいです! (2017年8月19日 21時) (レス) id: 79571655d4 (このIDを非表示/違反報告)
あんころもち(●´ ∞`●) - これってベト落ちですか?? あっ ネタバレになるならいいです!おもしろいので毎日楽しみにしています! (2017年8月19日 17時) (レス) id: 71908c4cef (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:愛羅♪ | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2017年7月27日 23時

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