恋路は二人で歩きたい2 ytyb

見送り ページ41

おもしろくない、非常におもしろくない


「どっちがいい？」

ソファに座ってる俺の前で二本のネクタイを首元に交互に充て始めたやぶくん


「どっちでもいい」

もう今さら子供っぽいとか思われてもいいので、あからさまな態度で返事をする


「どっち？」

俺のそんな態度に慣れ始めているやぶくんは顔色一つ変えずにもう一度同じ問いを繰り返す


「そっち」

２つのうちあまり良くない方を指すというささやかな嫌がらせ

さすがのやぶくんでもその意図を汲み取れなかったらしくニコニコしながら俺が選んだネクタイを結び始める

そんな姿が可愛くて


「うそ、やっぱりこっちがいい」

結局、よりやぶくんに似合う方を言ってしまった


「ねぇ、ホントに行っちゃうの？ 同窓会」


ソファに身を預けながらやぶくんに手を伸ばすと、またかという呆れ顔をしながらネクタイを結ぶ手を止める


「いくよ」

まさに子供と話す時のように俺の目線の高さに合わせて少し屈んだやぶくん

いつもと違ってしっかりセットされた髪は俺の力作


おもしろくない、大変おもしろくない

ちゅっと軽く口付けされて、頬を撫でられた
その行動に感化されて衝動的にやぶくんの腰を引き寄せる

驚いた声を上げ、シワになるとスーツを気にしている

シワの一つや二つくらい、つけばいいのに

完璧な姿で送り出したくない
同窓会だなんて、敵だらけのところに行ってほしくない

10年ぶりに会う人の中にはきっと昔の恋人や好きだった人もいる

それだけじゃない、当時は全然意識していなかったのに久しぶりに会うことで魅力的に見える人もいる


そんな人達がうじゃうじゃいる会場に恋人を快く送り出すことのできる心の広い人はこの世にどれだけいるだろうか

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