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もう少しというところで何かを思い出したらしいゆうとはポンと俺の背中を軽く叩き身体を離す
せっかくカウントしていたのに
ごそごそとリュックの中を漁って出してきたのは何かのチケット二枚
「今週末に水族館いこ!」
印籠を見せてるかの如く自信満々にチケットをヒラヒラさせてくる
水族館なんて久しぶりに聞く言葉の響き
子どもがいない限りこの年になって水族館なんて行かない
「どこの?」
チケットを一枚受け取って確認するとそこそこ有名なところで、電車で一時間半くらいで行ける
細長いその紙に書かれた色んなイベントの情報を黙って読んでいると、俺が行くのを渋っていると勘違いしたゆうとが一生懸命説得してきた
「え、もしかして今週末暇じゃないの? それとも興味ない? このショーとか楽しそうじゃない? あと、大きい水槽がリニューアルして注目されてるらしい。あと、子供の頃水族館とかあまり連れていってもらえなかったから行ってみたい。あと、やぶくんと最近ちゃんとデートしてない」
最後は勢いがなくなってボソボソ言ってる
こんなに行きたいなら嫌だとか言えるわけないし
そもそも行きたくないなんて一言も言ってないんだけど
チケットから目を上げるとダメ? としょんぼりしたゆうと
「いいよ。行こう」
ゆうとの手にあるもう一枚のチケットを抜き取りながらそう言ってやると一気に顔が輝き、心底嬉しそうな顔をする
「ところで、これ無料券じゃないよね? 買ったの?」
チケットにはそれぞれ大人一人という文字とその値段が書かれている
ゆうとにお金を出させるわけにはいかないのでズボンのポケットから財布を出しつつ聞いてみる
最近ではほとんど無くなった大人としての威厳だが、お金関係はさすがに働いている社会人として学生には譲れない
というか譲っちゃいけない
「あー、りょーすけから買ったんだよね。半額で」
やまだくんか、あの金髪のイケメンの
彼もデートしに行こうとしていたのかな?
「りょーすけは好きな人と一緒に行こうとしたけど、なんかその人が魚介類嫌いらしくて行くの止めたって」
そう説明してくるゆうとにチケットを奪い返された
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名無し84745号(プロフ) - 凛花さん» コメントありがとうございます。感想が聞けてすごく嬉しいです! (2019年4月13日 12時) (レス) id: 8ba8fca067 (このIDを非表示/違反報告)
凛花(プロフ) - コメント失礼します!凄く素敵でした!ゆとやぶ大好きなので書いてくださり本当に有り難いです…! (2019年4月12日 21時) (レス) id: d67589c485 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し84745号 | 作成日時:2019年2月3日 23時