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「ちゅーしたい」


寒い中やっと車に戻ってきてゆうとが発した最初の言葉はそれだった


「だめです」


エンジンをつけて暖房をオンにする

外ほどではないが結局車の中も寒いので一息つけない


「じゃあ、手ちょーだい」


拒否られてむくれたゆうとが運転席と助手席の間に右手を手のひらを上にして出してきたので、そこに自分の左手を重ねた

さすがにそれだけではゆうとの低いハードルも越えられないようで、物欲しそうな目にじっと見つめられる


だが、駐車場内にはそこそこ車もあって時々人影も見える

この状況下では夜とは言え、キスはできない


指を絡めるようにしてゆうとの手を握り直しながら窓の外を見ると、少し離れたところにあるビルが目に留まった

チェーンのビジネスホテルだ


「今日泊まるって言ってきた?」
「うん。ダメだった?」
「いや、俺もそのつもりだったから」


一瞬不安そうな顔を見せてすぐに顔を緩ませるゆうと

車内に暖房が徐々に効いてきて、コートを着たままなので暑い


「あそこに泊まるか?」


窓の外のホテルを指差す

朝のニュースでは今日がUターンラッシュだと言っていたから、きっと一部屋くらい空いてるはず


「え、どこ?」


キョトンとしてるゆうとに

あのホテルだよ、ともう一度説明すると


「お金持ってないよ?」


喜ぶと思ったのに現実的な心配をしてきた

そういうとこ真面目すぎる


「お金のことは気にするな」
「でも、」

「泊まりたいの? 泊まりたくないの?」


意外とハッキリしないので強めに聞くと


「泊まりたい、です」


機嫌を窺うような目をしながら答えた

いつもはぐいぐいくるくせに、何を今さら遠慮しているのだろうか


「はい、じゃあ決まりね」


繋いだ手を解いてゆうとの手のひらをポンと軽く叩く


「シートベルトして」
「うん!」


嬉しそうな声はきっと、ハードルを越えることに成功したからだ



神社の特設の駐車場から出て来た道とは違う方へと曲がる

さすがに交通量も減ってスイスイ進む


「満室だったら帰るからな」
「分かってる」


空いてますよーにとホテルに向かって祈るゆうと



去年の今頃は、

こんな未来想像もしていなかった



来年は、

せめてゆうとが幸せであればいい


それだけでいい

2月の覚悟→←5



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名無し84745号(プロフ) - 凛花さん» コメントありがとうございます。感想が聞けてすごく嬉しいです! (2019年4月13日 12時) (レス) id: 8ba8fca067 (このIDを非表示/違反報告)
凛花(プロフ) - コメント失礼します!凄く素敵でした!ゆとやぶ大好きなので書いてくださり本当に有り難いです…! (2019年4月12日 21時) (レス) id: d67589c485 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名無し84745号 | 作成日時:2019年2月3日 23時

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