プロデュース科の一期生はキツくて優しい【追憶】 (ページ10)

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10　武士ドルページ10

「ご説明、感謝するのである。
実は今日、昼頃に蓮巳殿にも「刀を持ち歩くな」と叱られてな。理由がわからなかったのであるが、貴女の説明のおかげでようやくわかったのである。
家に帰ったら改めて校則にも目を通しておくこととしよう」

『そうしなさい』

「うむ。
あ、これは失敬。名乗るのを忘れていたな。
我は神崎颯馬。あいどる科の一年生である。以後お見知り置きを」

私の言葉に頷くと、彼が名乗る。

それに応えるように、私も口を開いた。

『プロデュース科二年、綴A。よろしく』

「よろしく、である。
綴殿、此度のこと、本当に感謝しているのである」

『？そうなの』

よろしく、と言い合った後の突然の改まった話に、疑問符を浮かべながらそう頷く。

私が続きを待っていることに気づいたのか、颯馬は続けた。

「我は別に、悪さがしたいわけでもなければ、他人に害意を向けたりしたいわけでもないのだが、刀を携えているからか、皆怖がって近寄ってこないのである。
郷に行っては郷に従えというし、なるべく周りに寄り添いたいとは思うのだが...。
誰も何も言ってくれないのでは、何を直していいのかも、どう折り合いをつけるべきかもわからぬ。
故に困っていたのだ」

『......』

「けれど貴女は、刀を持っている我を遠巻きにすることなく、むしろ刀について真正面から叱りつけてくれたであろう？
それが嬉しかったのである」

『...まあ確かに、普通は怖がるのが先でしょうね』

「うむ。...綴殿は、怖くないのであるか？」

話し終えた様子の颯馬に、相槌を打つとそう尋ねられる。

颯馬のその表情は、純粋に気になる、と口以上にものを語っていた。

『何言ってるの。普通に怖いわよ』

「！？では何故先ほど声をかけてくれたのであるか？」

ずっと立ち止まっていた場所から、帰路へと足を踏み出しながら答える。

颯馬は私の言葉に驚きながらも、ついてきて隣を歩き出した。

『なんでも何もないわよ。
あんたが腰に刀ぶら下げてるの見て、ノープランで声をかけたもの』

「？？何か意図があったのではないのであるか？」

『...ええ。
でもまあ、普通に物騒だし、やめなさいって言いたかったのかもしれないわね。無意識的に』

私がそう答えれば、颯馬は驚いた顔をする。

武士だし、刀ぶら下げてるけど、割とコロコロと表情が変わるし、根は真面目なんだろうな、と心の中でそう思った。