７ 有名人？ ページ7
『それじゃあ』
「ああ、またな」
昼食を食べ終わると、私は職員室、紅郎は教室と行き先が違うので、ガーデンテラスで別れる。
そして職員室に向かって歩いていると、肩をトントンと誰かにつつかれた。
『？』
誰だろうかと振り返れば、爛々と輝く赤い瞳と目が合う。
その人は私の顔を見ると、ニヤリと口元を歪めた。
「お、やっぱりおまえが噂の転校生か」
『？確かに私は転校生だけど、それがどうしたのよ？』
「いや？ただ、学校中で噂になってたからな。どんな奴か見ときたいと思っただけだ」
『そう。じゃあ私はこれで』
突然の展開に戸惑ったけど、彼の言葉にそう返して、踵を返して歩き出す。
けれど、そう何歩も歩かないうちに、またさっきの彼に捕まった。
首根っこを掴まれて。
「おまえ、俺の事知らねぇのか？」
『はぁ？』
「アイドルとか興味無い感じ？じゃあなんでプロデュース科に来たんだよ？」
そう訪ねてくるそいつは、喋りながら段々と面白がるような表情を浮かべる。
......興味津々、って感じね。
『プロデューサーに向いてるからなるだけよ。
あんたのことは知らないけど、有名なの？』
「まあそこそこ有名なんじゃねえの？海外とか行ってライブしたりしてるしな。
そんなことよりおまえ、面白いな。俺の友達にならねえか？」
『はあ？』
「ひでえ反応だな。そんなに嫌か？」
有名だというそいつは、私の反応を見て肩をすくめる。
飄々としているその様子が、何となく癪に障った。
別に、友達云々が嫌なわけではないけど...。
『名前も名乗らないで友達とは、よく言うわね』
「ああそういえば結局言ってなかったな。
俺は朔間零。1回留年してるけど、一応2年」
『そ。私は綴A。2年。よろしく』
「よろしく〜」
お互いに名乗れば、零は幼馴染かと思うような気軽いノリで肩を組んでくる。
そうして私があからさまに嫌そうな顔をしているのは一切気にかけず、零は質問をなげかけてきた。
「そんで、Aはどこに行くんだ？」
『職員室。教材を受け取りに行くのよ』
「おお、じゃあ一緒に行こうぜ。俺も海外から帰ってきて、職員室に報告に来いって言われてんだよ」
『......まあ、いいわよ』
零からの誘いに頷いて隣を歩き出す。
どこか不思議な雰囲気を持つ零は、私が了承して直ぐに肩を組んでいた腕を放してくれた。
どうやら、さっきまでのは私を捕まえておくためにやっていたらしい。
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作者名：速川 薫 | 作成日時：2024年3月23日 12時
