プロデュース科の一期生はキツくて優しい【追憶】 (ページ3)

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３　転校ページ3

『...ここが、私立夢ノ咲学院』

茶色いレンガ造りの校門の入り口に立ち、校舎へと続く道を眺める。

桜の散るその景色はとても綺麗だったけど、まっすぐ伸びたその道には所々ゴミが捨てられていて、残念な印象だ。

近年荒れているって言うのは本当だったらしい。

そんなことを考えながら、校門をくぐる。

そして、目の前の長い道を歩いていけば、校舎の壁に囲まれるように噴水が設置されていた。

噴水の水はとても澄んでいて、誰かがこまめに綺麗にしているのが見てわかる。

校舎案内図が映し出されたスマホを片手に、生徒用玄関にたどり着き、
あらかじめ伝えられていた下駄箱に靴を入れて持参のスリッパを履くと、チェスボードのような柄の廊下を、案内図通りに進んでいった。

さっきからチラチラと周囲の視線を感じる。

好奇の視線というか...、そんな感じ。

やがて目的の場所まで辿り着き、目の前の扉をノックすると、ガラガラと音を立てて一人の男の人が迎え入れてくれた。

「時間通りですね。無事に職員室まで辿り着いたようで何よりです。ようこそ、夢ノ咲学院へ」

そういった彼は私に手を差し出す。

求めに応じ握手をすれば、職員室の隅の、応接室のようなところに通された。

明るい茶髪にキリッとして見える眼鏡の先生は、アイドル科の教師らしく美形だ。

『本日転入の綴Aです。よろしくお願いします』

「よろしくお願いします。私は椚章臣です。
早速ですが、色々と説明させてもらいますよ」

『はい、お願いします』

私が頷いたのを確認した椚先生は、手に抱えていた書類を私の前の机に置く。

そして、順に説明をしていってくれた。

忙しそうなのに、思っていたより丁寧な説明のおかげで、内容は把握できた。

まず、私はプロデュース科一期生という扱いで、
これからアイドル科の校舎でアイドルと共に日々学ぶことになるらしい。

授業内容はほとんど普通の高校と変わらない。

ただ、授業に加えてアイドルの活動をサポートするプロデュース活動を行っていき、徐々に仕事に慣れていく必要があるということだった。

それでも最初のうちは授業の空き時間などに先生に言われた仕事をこなし、自分で仕事をとってくるのは慣れてからでいい、とか。

想定よりも優しい話だ。

「以上で説明は終わりです。それでは」

そうして説明をあらかた終えると、椚先生は私がさっきまで見ていた案内図の紙版を渡し、自分の席へ戻っていった。