13 突然の来訪者 ページ13
「よぉ、このクラスに転校生がいるって聞いたけど、いる？」
昼休憩、昼食を終えて暇を弄んでいると、ガラリと教室の扉が開かれて、誰かがそういった。
聞き覚えのある声に振り返れば、いつだかの赤い瞳と目が合う。
彼は初対面の時と同じようににっと笑うと、指を上にくいっと持ち上げ、私にいった。
「ちょっと来いよ」
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『それで、なんのよう？』
「相変わらずつれねえな〜。もっと優しくしゃべってくれよ」
『あんた別に気にしてないでしょ』
「ん、まあな」
呼び出しに応じて零についていけば、屋上に連れて行かれ、そこで話をする。
なんでも、零は昨日まで海外に行っていたらしく、一時的に戻ってきた今日は、生徒会長として生徒会のいざこざのいくつかを解決して回っていたらしかった。
『大変ね...。というか、あんた生徒会長だったのね』
「お、それも知らなかったか。まあ一応な。それも来週までだけどよ」
『？来週何かあるの？』
「おう、まあな。そんで、今日呼び出した件だけど...」
そこまで言った零は、さっきまでより真剣みを帯びた目で、私を見据える。
真剣な目つきなのに口元はニヤリと笑っている、おかしな表情だ。
「お前の一個下の学年に、乙狩アドニスっつー男がいるんだけどな。そういつは俺がアラビアらへんで恩師から預かってきた子なんだ。
俺はまた明日から１週間海外だし、あんまりまともなサポートをしてやれねえからさ、もし困ってるとこを見かけたり、アイドル活動で苦労とかしてそうだったら、お前が助けてやってほしいんだよ」
『...どんなやつなの？』
「お、いいのか？」
『いいから、写真があるならさっさと出しなさい』
「おう。あ、ついでに俺と連絡先交換しとこうぜ。忘れるといけねえし、写真送るわ」
『わかったわ』
「サンキュ」
携帯を突き合わせて、連絡先を交換すると、早速スタンプと写真が送られてくる。
写真に写っているのは柔らかい紫の髪をした褐色肌の男子だった。
『こいつね。覚えとくわ』
「おう、頼むわ。次帰ってきたら、また礼すっからさ」
『いらないわよ、あんたからの礼とか』
「ククッ。そうかよ」
わざとつっけんどんに返せば、珍しく自然な表情で零が笑う。
そんな表情を見て、私もつい表情を緩めれば、零は少し驚いたような顔をした後、さっきよりもいい笑顔で笑って去っていった。
「じゃあな！」
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作者名：速川 薫 | 作成日時：2024年3月23日 12時
