11 いい日和？ ページ11
何人かの癖の強いアイドルたちに出会った翌日、朝。
私は教室の扉の横に背を預け、教室内の話し声を聞いていた。
「＿＿じゃあ、紹介する。入ってきていいぞ」
『はい』
呼び掛けに答え、扉を開く。
扉をくぐった瞬間、大勢の視線がこちらに向けられるのを感じた。
『プロデュース科に試験的に転入しました。綴Aです。よろしくお願いします』
自己紹介を軽くすれば、パラパラとまばらに拍手の音が聞こえる。
教室内を見た感じ、さすがアイドル科というか、全体的に顔面偏差値は高そうだ。
「それじゃ、綴の席は.....、お、窓際の1番後ろ、空いてるな。そこに座れ」
『わかりました』
言われた通り、窓際の1番後ろまで人の視線を受けながら歩いて、席に着く。
前には、黄緑色の奇抜な髪色をした男の子が座っていた。
奇抜といえば、隣に座っている子も、長い銀髪でなかなか見ない色をしている。
どちらも色の感じからして地毛らしいのがさらに驚きだ。
「それじゃ、1限目始めるぞ」
そんな担任の声を聞いて、号令に従って立ち上がる。
どうやら、まともに授業に出ない生徒が多い所を、私の話題を利用して集めたらしい。
そしてそのまま朝礼から授業へ、と流した感じに見える。
その証拠に、何人かの生徒はあからさまに嫌そうな顔をしていた。
＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿
「では、今日の授業はここまで」
「っ起立！」
先生の言葉を待っていたかのように、号令の人が声を上げる。
そして、挨拶もそこそこにたくさんの生徒が動きだし、昼休憩が始まった。
私も礼儀として挨拶を終えた後、持ってきたお弁当を机の上で開く。
すると、前から例の黄緑の男子生徒に話しかけられた。
「ねえねえ、君のお弁当、君のお母さんが作ったの？」
『......？私が自分で作ったけど......』
突拍子もない質問に、つい眉を寄せてそう答える。
そして言ってしまってから、また睨むような目付きをして話してしまったことに気づいた。
「へえ！自分で作ったにしてはいい出来だね！いい日和！」
『...いい、日和？』
「うんうん、いい日和！君、なかなか面白そうな子だね！」
『.....はぁ』
「あ、そうそう。僕は巴日和。せっかく同じクラスなんだし、席も近いし、仲良くしようね？なんなら、特別に呼び捨てにしてもいいからね！
それが、いい日和♪」
『.....まあ、いいけど。』
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作者名：速川 薫 | 作成日時：2024年3月23日 12時
