金曜日、一緒にご飯を食べるだけ。【そらる】

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私が彼方くんと一緒にご飯を食べるようになった原因は、彼の食生活にある。

友達が近くに住んでいれば安心、という理由で一人暮らしを許された私は成り行きで彼と同じマンションに住むことに決めたのだけど、その際に彼のお母さんから直々に「彼方の面倒を見てやってくれませんか」とお願いされた。

彼方くんは非常に生活力が低い。洗濯や掃除はなんとかなっても、問題は食事だった。

徹夜で食事を抜かす、お腹が空いてないからと水しか口に入れないのは日常茶飯事。自炊が面倒だからとゼリー飲料しか食べない時もあった。

極めつけは、珍しく『料理する』なんて言い出したと思ったら、生卵を電子レンジに突っ込んだことだ。あたためボタンが押される前に止められたからよかったけど、ここまで常識がないのはちょっとまずい。


そこで私が提案したのが、『金曜日、2人で一緒にご飯を食べること』だ。

金曜日は私が唯一定時上がりできる日、つまり私もいつもよりちゃんとした料理が作れる。さすがにこんな食生活の彼を放っておけない。

……というのもあるけど、私自身、1人きりの食卓に寂しさを覚えていた。テレビ相手にご飯を食べたり下心渦巻く飲み会でお酒を飲むより、気心知れた幼馴染みと2人で中身のない会話をしながら手料理を食べる方がよっぽど楽しい。

時折彼方くんが連れてくる後輩や友人たちにも慣れたし、大人数での食事もたまにならいいものだ。簡単な料理であったとしても、美味しいと嬉しそうに食べてもらえるとこちらも自然と笑顔になれる。


こうして、私は彼方くんと一緒にご飯を食べるようになったのだ。

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