黒蝶の夢・参【不死川実弥】 (ページ7)

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「……、」

黒羽がそう告げる中、不死川は何か思い出したかのような様子で

「(そう言えば、牛鍋は…匡近の好物だったよなァ)」

ふと、そんな事を思うと同時に

『実弥、牛鍋食べに行こうか！』

『その後は…実弥の好きなおはぎも食べに行こう、』

そう告げる朗らかな青年の笑顔が頭の中へと浮かび

「牛鍋か…悪くねェなァ」

かつての記憶を思い出し、不死川の口元が思わず緩む中

黒羽は不思議そうな表情を浮かべながらも、不死川の言葉を受け

「決まりですね、どうせ行くなら…良い肉食べましょう。確か街の方に、高級店があったような…」

黒羽がそう呟くと、不死川は怪訝な表情を黒羽の方へと向けて

「お前、わざと高い店出向いて…俺に金使わせようとしてねェかァ…？」

「…言っとくけどよォ、今日は絶対奢らねェからなァ…自分の分は自分で払ェ」

そう告げるものの、黒羽は特に気に留める様子もなく

「(そうは言っても…不死川さん、最終的に奢ってくれるんですよね…。)」

「(今日も沢山…金使わせよ、___)」

そんな事を思いながら、不死川と共に玄関の方へと向かう。

一方、先程黒羽とすれ違った胡蝶は

「(……、…___)」

一旦足を止め、黒羽と不死川の後ろ姿へと静かに目を向ける。

するとそこへ、任務を終えたカナヲが通り掛かり

「師範、只今戻りました。師範も…任務を終えられて___」

そう声を掛けるものの、胡蝶にはその声が届いておらず

「師範…？」

カナヲはそう声を掛けると同時に、胡蝶の視線の先へと目を向ける。

そこには肩を並べて歩く、黒羽と不死川の姿があり

その様子を眺める胡蝶の姿は、何処か寂しそうにも見えた。

「(…師範…、)」

カナヲが少し心配そうな様子で、胡蝶を見つめる中

胡蝶は静かに口を開いたかと思えば、

「やはり…私の継子にすべきでは、なかったのかもしれませんね…。___」

そう呟いた後、側にいたカナヲの方へと目を向けて

「カナヲ、お腹…空いてませんか？」

「一緒に何か、食べに行きましょうか。」

にこやかな笑顔と共に、そんな言葉をカナヲへと投げ掛ける。

「あ…はい…。」

カナヲはすぐさま返事をしながらも、

先程、胡蝶が呟いた言葉を思い出し

「(さっきの言葉は…どういう意味だったんだろう…。)」

そんな事を思いながら、胡蝶の後ろを付いて歩いた。