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私はそんな九條さんの背中を見送った後、



「……、」



机上の隅に置かれていた、とある写真に視線を移す。



写真の中には、まだ幼い顔付きをした九條さんの姿と



九條さんと同じ赤髪の少女が映り込んでおり



「(そんなに…似てますかね、…。)」



そんな事を思いながら、遠目からその写真をただ眺める。















その後、屋敷の庭へと移動し



「(随分と…変わりましたね…、)」



辺り一面に咲く…鮮やかな花々へと目を向けながら、ふとそんな事を思う。



「(昔は雑草ばっかで、見るに堪えない有様だったってのに…。____)」

















___数年前、この庭は随分と荒れ果てた様子で



『(せっかく広い庭なのに…勿体無い、)』



九條さんの下で修行を積みながら、何度そう思った事か。



『九條さん、アンタ…趣味とかありますか。』



『…趣味?特にないけど、』



『そうですか、じゃあ…これあげますよ。さっき街中で調達してきました。』



そう言って九條さんに、花の種が入った袋をいくつか手渡し



『種を植えて、決まった時間に水を与える…これくらいなら不器用なアンタでも出来るでしょう。』



『試しにやってみて下さいよ、案外ハマるかもしれませんよ。』



縁側で空を眺める九條さんに対して、そう声を掛けるものの



『花…ねぇ、いや…いいよ。俺には向いてない、』



手渡した袋は返され、九條さんはぼんやりと宙を仰ぐだけ。



私はそんな九條さんに対して、『そうですか』と言葉を返し



『花を愛でる事と…人を愛する事は、大して変わりないですよ。』



『アンタのその持て余した愛情は、人よりも…花に向けた方がいいかと思ったんですけどね。____』



花の種が入った袋を抱え、部屋の襖へと手を掛ける。



『……、』



九條さんは私の言葉を聞き、口を閉ざしたかと思えば



『俺にはもう…誰かを愛する資格もなければ、花すら愛でる資格だって持ち合わせてない…。』



『きっと…枯らすだけ、紫が育てた方が綺麗に咲くだろ。…庭は好きに使っていいよ、___』



…呟くようにしてそう告げる、九條さんの背中を目にし



『(…辛気臭、)』



そんな事を思いはしたものの



『では…お言葉に甘えて、好きに使わせてもらいますね。___』



そう言って襖を閉め、庭の方へと向かっていった。

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作者名: | 作成日時:2023年11月1日 0時

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