142 ページ46
静かに拳を握りしめながら、そんな思いを黒羽へと告げるものの
「…不死川さん、もう帰って下さい。」
「それで待って、もう二度と此処には来ないでいただけますか。」
黒羽ははっきりとした口調で、不死川にそう告げた後
「それに…既に隊を降りた私にとって、アンタは所詮赤の他人ですからね。」
「こうして私がアンタと話をする理由もなければ、アンタが私に構う理由だって…もう無い筈ですよ。___」
***
(黒羽 side)
___その後、アイツは無言で屋敷を去り
数日の間は、この場所に訪れる事などなく
「(ちゃんと言えば…意外に分かってくれるもんなんですね、)」
気を緩めると共に、そんな事を思ったのも束の間。
アイツはふたたび、この場所へと足を運んだかと思えば
『私と話がしたい』と、九條さんに何度も頼み込んでいるようで
「紫は…『君と話す事はもうない』って言ってるんだ、悪いね。___」
その度に私は九條さんを通じて
今日も今日とて、アイツを追い返してもらっている。
アイツが去った後、九條さんは私の部屋へと足を運び
「___紫、今日も不死川くん来てたけど…本当に彼の事、追い返して良かったの?」
幾度かそんな問いを、投げ掛けてはくるものの
「いいんですよ、というかアンタ…私の心配より自分の心配したらどうです?」
「この前の縁談、破談になったんでしょう。…アンタ、このままだと一生独り身___」
「独り身じゃない!俺には紫がいる、!!」
「………離れて下さい、殴りますよ。」
泣きつく九條さんに対して、そう言葉を返し
「せめて…私が死ぬ前までに、いい人見つけて下さいよ。」
「私はこれでも、不器用ながら…アンタの幸せを願ってるんですから。」
九條さんの方へと目を向けて、率直な思いを告げる。
「……、」
九條さんは私の言葉を聞き、黙り込んだかと思えば
「俺はもう…二度とこんな思いはしたくなかったんだけどな…。____」
そう告げると同時に、私の身体を軽く抱き寄せ
「…アンタ、誰と重ねてるんですか。」
九條さんに対して、そう言葉を掛けると
「(……)」
九條さんは視線を落とし、俯いた様子でいながらも
抱き寄せていたその手を解き
「じゃあ俺は…今から買い出し行ってくるから、留守頼むね。___」
何事もなかったかのような顔で、その場を立ち去っていく。
117人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時