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黒羽はそう告げた後、渇いた咳を一咳放ち
「(……)」
不死川は襖へと触れかけた手を、静かにもとの位置へと戻す。
「で…?アンタ、何しに来たんですか。」
淡々とした口調で、黒羽がそんな問いを投げ掛ける中
不死川は少し沈黙の後、口を開き
「何で…何も言ってくれなかったンだァ…、」
拳を握りしめながら、呟くようにしてそう尋ねるものの
「何でって…言う必要がないからですよ。」
「私が隊を降りようが、何処で野垂れ死のうが…アンタには関係ないでしょう。」
黒羽は素っ気ない口調で、不死川の言葉に返答し
「…って事で、帰って下さいよ。私は今、余生を満喫してるところなんで。」
「とは言っても、殆ど馬鹿の世話してるだけなんですけどね…。まァでも、退屈はしないんで…この生活も悪くはな___」
不死川に対して、黒羽がそう言葉を発した時だった。
「…帰るぞォ、」
不死川は黒羽の話に被せるようにして、そんな言葉を投げ掛け
「……」
対する黒羽は少し間を置いてから、
「こんな身体で帰ったところで…何になるんですか、私はもう…刀は握れませんよ。」
重たい口を開き、不死川の言葉に対して返答する。
「刀はもう握らなくていい…、隊を降りるのも構わねェ…けど、お前が居るべき場所は此処じゃねェだろォ…」
「だから…、早く胡蝶のところに____」
不死川は黒羽に対して、そんな言葉を投げ掛けてはみるものの
「不死川さんなら…私の気持ち、分かってくれると思ったんですけどね。」
黒羽は不死川の言葉を遮るようにして、そう告げたかと思えば
「もし仮に…アンタが私の立場にたったとしたら、アンタだって私と同じ選択を取ると思いますよ。」
「大事な人たちに、悲しい顔なんてさせたくない…そうでしょう。…そんな顔させるよりだったら、独りで死んでいく方がよっぽどいい。」
「___だから…不死川さん。今回ばかりは連れ戻そうだなんて野暮な真似はせず…、見逃して下さいよ。」
「アンタに少しでも…私を思う気持ちがあるのならば、最期の望みくらい…聞いてくれてもいいんじゃないですか。」
微笑を浮かべながら、黒羽がそう告げる中
「……、…____」
不死川はしばらくの間、視線を落とすと同時に口を閉ざし
「それでも俺ァ…お前を独りで死なせたくねェ…。」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時