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ため息混じりに黒羽が声を掛ける中、
「…うるせェ、」
不死川は決まりの悪そうな表情を浮かべながら、診察室の椅子へと腰を下ろす。
黒羽はすぐさま薬と包帯を手に取り、
「此方としては…あまり面倒ごとを増やさないでいただきたいんですけどね、」
「アンタに裂いてる時間ほど…無駄なものはないので。」
憎まれ口を叩きながらも、手際よく手当てを行っていく。
「なァ…紫、」
その間、不死川が静かに口を開いたかと思えば
「何です、不死川さん。」
「……、」
何か聞きたそうな様子で、黒羽へと視線を向けるものの
「いや…何でもねェ…。」
後の言葉は告げる事なく、視線を僅かに下へと落とす。
黒羽はそんな不死川の方へと目を向けて、
「(…面倒臭い奴、)」
そんな事を思いながらも、何かを察した様子で口を開き
「これは単なる私の独り言なんで…聞き流してくれていいんですけど、」
「先程とある隊士の診察を担当しまして…その方もアンタみたいに傷の絶えない隊士でしたよ。」
「まァでも…致命傷となるような深い傷はなかったので、思ったより早く診察は終わりましたね。」
傷口に薬を塗り、包帯を巻きながらそんな言葉を投げ掛ける。
不死川は黒羽の話に対して、特に返答はしなかったものの
「(……)」
瞳の奥には微かに安堵の色が浮かんでおり、
黒羽はそんな不死川の変化を感じ取った後、付け足すようにして
「あァ、それと…その隊士もアンタみたいに虐めがいのある隊士でしたよ。」
「口付けしようとしたら、顔真っ赤にして…挙げ句の果てには気失ってましたし…。」
「ああいうタイプ、中々見ないので…新鮮でしたよ。今度会ったら、また何か仕掛けよう___」
黒羽が淡々とした口調でそう話す中、
「辞めろォ、あまり…揶揄うンじゃねェ」
不死川は黒羽の言葉を遮るようにして、そんな言葉を投げ掛ける。
「(この人、絶対ブラコンですよね…きしょ。)」
内心そんな事を思いながら、黒羽が包帯を巻き終える中
「……」
不死川は黒羽の方へと目を向けたかと思えば、
「なァ、お前…他の奴にもそういう事してンのかァ」
「変な気でも起こされたらどうすンだァ…、嫁入り前の女が男に易々と触るモンじゃねェ。」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時