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九條がそう声を掛ける中、黒羽は上空から視線を外す事なく
「あの人がどう思おうが…私は知りませんよ、」
淡々とした口調で、九條に対して言葉を返す。
九條はそんな黒羽を目にし、ふたたび口を開いたかと思えば
「彼…また君の事、迎えに来るんじゃないかな。」
「モテる女は辛いね…俺もそれくらい、誰かに想われてみたいもんだよ。」
冗談混じりの笑みと共に、そんな言葉を黒羽へと投げ掛ける。
「(……、)」
対する黒羽は、何か考え込んだ様子でいながらも
「不死川さんが来たら…『私は此処に居ない』と言って、追い払って下さい。」
「私の最期を看取るのは…アンタだけで十分なんですよ、___」
九條に背を向け、颯爽とその場を立ち去っていく。
黒羽が去った後、九條は沈む夕日へと目を向けながら
「…、…____」
かつて不死川が、黒羽を連れ戻しに訪ねてきた…あの日の記憶を思い出す。
『此処に…コイツ、来てねェかァ…。』
写真を取り出し、そう尋ねる不死川の表情は
『(随分と疲れ切ってるというか…彼は相当、紫の事探したんだろうな…。)』
九條はそんな事を思いながらも、写真を眺めた後
『…初めて見る子だ、此処には来てない。』
不死川に写真を手渡すと共に、淡々とした口調で言葉を返す。
『そうかァ…悪ィ、邪魔したなァ___』
肩を落としながらも、すぐさま次の場所へと向かおうとする不死川に対して
『君は…何でその子を探してるの、?』
九條は思わずそんな問いを投げ掛け、
『……』
不死川は九條に背を向けたまま、呟くようにして
『アイツが剣なんか握らずとも…この俺が、全ての鬼を根絶やしにしてやらァ…』
『だからアイツは…自分の夢叶えて、幸せに生きてくれれば…それでいいからよォ…、____』
「(___あの後…結局彼に居場所教えて、紫に怒られたんだよなぁ…。)」
「(今度は…上手く隠せるといいけど…。)」
かつての記憶を思い出し、九條はそんな事を思いながらも
『私の最期を看取るのは…アンタだけで十分なんですよ、___』
先程、黒羽が告げた言葉と
『(……、)』
直前に視線を落とし、黙り込んでしまった黒羽の姿を思い起こし
「君が最期に側にいて欲しいと思うのは…俺じゃないと思うけどな…。____」
沈む夕日を眺めながら、静かにそう呟いた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時