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(No side)
一方その頃、『九條』と表札が掲げられた屋敷では
縁側へと腰を掛け、話し込む九條と黒羽の姿があり
「___紫、ちゃんと皆に…お別れは言ってきた?」
「しのぶさんとは少し話をしましたが、他は特に…。」
…そう告げる黒羽の視線の先には
蝶屋敷の住人たちと撮った、一枚の写真が握られており
九條はその写真を隣から覗き込んだかと思えば、
「…あ、この子俺のタイプ___」
胡蝶を指差し、そんな言葉を投げ掛けるものの
「しのぶさんに手出したら…末代まで祟りますよ。」
「アンタの軽率な一言で、九條家が根絶やしになってもいいんですね。」
後の言葉は黒羽に遮られ、九條はすぐさま口を閉ざす。
その後、黒羽は手に持っていた写真を折り畳み
「まァ…私が手を下さすとも、アンタは生涯独り身でしょうから…ゆくゆくは自滅の道を歩む事になりそうですね。___」
折り畳んだ写真を紙飛行機にして、躊躇う事なく夕日が沈む空へと飛ばす。
九條は黒羽が飛ばした、紙飛行機へと目を向けて
「せっかくいい写真だったのに…勿体無い。」
「紫は…あれか、思い出は綺麗さっぱり断ち切れるタイプか。」
九條がそう告げる中、黒羽は上空へと視線を移したかと思えば
「いえ…そういう訳じゃないですけど、なるべく遺品は残したくないんですよ。」
「いずれは…全部、手放せるようになりたいんですけどね。___」
懐からまた新たな写真を取り出し、その写真へと視線を落とす。
そこには幼い黒羽と隊士時代の不死川、今は亡き…青年の姿が写っており
「あ…これ、もしかして不死川くん?」
九條はまたしても黒羽の写真を覗き込み、そう声をかけたかと思えば
青年を挟んで互いに睨み合う、黒羽と不死川の姿へと目を向けて
「不死川くんとは…この頃から仲良かったんだね。」
にこやかに微笑みながら、そんな言葉を黒羽へと投げ掛ける。
「何処をどう見たら…仲良く見えるんですか、___」
黒羽は九條に対して、ため息混じりに言葉を返した後
ふたたび写真を折り畳み、それを紙飛行機にして空へと飛ばす。
「……、…___」
黒羽が空へと消えていく紙飛行機を眺める中、
九條は黒羽の方へと目を向けて
「その様子だと…君は不死川くんにも、何も言わず出て来たんだね。」
「彼…怒ってるんじゃないかな。君が何の相談も無しに隊を降りて、独りで死のうとしてる事。」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時