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風呂敷から用具箱を取り出し、
慣れた手つきで黒羽が傷を縫い始める中
「(相変わらず、手際いいなァ…)」
不死川は黒羽の手元へと目を向けながら、そんな事を思った後
「……、」
その視線を黒羽自身へと移し、静かに黒羽の顔を眺めていると
「不死川さん、何か用ですか。」
不意に声を掛けられ、不死川の肩がビクりと跳ねる。
「いや…何でもねェ、…」
俯く不死川に対して、黒羽は目を向けたかと思えば
「アンタ…顔にも新しい傷つくってきましたね…、全く…。___」
溜息を吐きながらも、用具箱から消毒液を取り出し
「どうせ何も考えず…捨て身の戦い方してるんでしょう。もっと頭使ったらどうです、」
側へと身を寄せ、不死川の顔へと手を伸ばす。
「(…近ェ…、)」
不死川が内心落ち着かない様子で、視線を外す中
黒羽は不死川の様子を気に留める事なく、絆創膏を顔へと貼り終わった後
「……、___」
無言で懐からペンを取り出し、絆創膏の上から何かを描き始める。
「オイ、何してンだァ…」
不死川がそう声を掛ける中、黒羽は黙々と何かを描き続け
「まァ…なかなかいい出来ですかね。___」
明らかに悪意のある似顔絵を描き終わると同時に、ペンを懐へと収め、その場に立ち上がる。
「とりあえずの処置はしたので…後々何かあれば、その時は蝶屋敷に出向いて下さい。」
「では、私は…これから潜入捜査を兼ねた任務に向かいます。隊服よりも…着物の方が目立ちませんからね、」
黒羽はそう告げた後、不死川に背を向け歩き出し
「なァ…紫、」
不死川は立ち去ろうとする黒羽に、声を掛けたかと思えば
「その任務終わったら、また飯行かねェかァ」
そんな言葉を黒羽へと投げ掛け、
「(……)」
対する黒羽は、何処か思い詰めたような表情を浮かべながらも
「いいですね、その時は…勿論アンタの奢りで頼みます。___」
取り繕った声色で返答し、決して振り返る事なくその場を立ち去っていく。
黒羽が去った後、不死川は自身の顔へと触れ
「(アイツ、何描いたンだァ…？)」
そんな疑問を抱きながら、風屋敷へと向かう一方で
黒羽は先程の不死川との会話を思い起こし、
「(果たせない約束なんて…なるべくしたくありませんけど…、)」
「(まァ…最後の嫌がらせという事で、大目に見てくださいよ…不死川さん。____)」
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作者名：雫 | 作成日時：2023年11月1日 0時
