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「しのぶさん、お手数おかけして申し訳ありませんが…その文は本部の方に送っていただけると助かります。___」
黒羽はそう告げると同時に、屋敷の戸を開け
「……」
対する胡蝶は、立ち去ろうとする黒羽の背中へと目を向けた後
「あなたの帰りを…私は此処で待ち続けています。」
「気を付けて行って来てくださいね。」
にこやかな笑顔と共に、そんな言葉を黒羽へと投げ掛ける。
「……、…____」
対する黒羽は、胡蝶の言葉に返答する事なく
静かに戸を閉め、薄暗い夜道へと足を踏み入れた。
***
道中、黒羽は厚い雲がかかった月へと目を向けて
「(今日は…蝶飛んでないな…。)」
空を見上げながら、ふとそんな事を思っていると
「___っ、」
何かにぶつかり、視界が遮られたかと思えば
「お前…こんな所で何してンだァ、?」
顔を上げると、そこには任務帰りと思われる不死川の姿が。
「不死川さん…ちゃんと前見て歩いて下さいよ、危ないですよ。」
「何人のせいにしてンだァ、前見ずぶつかりに来たのはお前だろォ」
不死川は呆れた様子でそう返しながらも、
「…怪我してねェか、」
黒羽の顔を覗き込みながら、そんな言葉を投げ掛け
黒羽は「大丈夫です」と言葉を返した後、
「では、私はこれで。___」
不死川に構う事なく、すぐさまその場を立ち去ろうとするものの
すれ違う直前で、不死川に腕を掴まれ
「お前、こんな時間から何処行くンだァ」
「格好からして…任務って訳でも無ェだろォ」
隊服ではない着物へと目を向けながら、黒羽に対してそう問い掛ける。
「……」
黒羽は少しの沈黙の後、不死川の方へと視線を移し
不死川に対して、返す言葉を探していたのも束の間。
「…あ、」
黒羽は何かに気付いた様子で、言葉を発したかと思えば
自身を掴んでいた不死川の手首を、反対の手で掴み返し
「アンタ…また派手にやってきましてたね、これ縫わないとダメなやつでしょう。」
不死川の羽織から覗く、深手の傷へと目を向ける。
対する不死川は、決まりの悪そうな表情を浮かべながら
「…別に…何ともねェ…、」
そう呟くものの、黒羽は不死川の腕を引きながら道端へと逸れ
「師範の手を煩わせるのもアレなんで…私がやってあげますよ。此処に座って下さい、__」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時