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目の前の黒羽に対して、九條がそう声を掛けるものの
「変わりませんよ、」
黒羽は九條の言葉を遮るようにして、はっきりとした口調でそう言い切り
「…これでいいんですよ。私はもう…あの人たちに余計な心配をかけたくないですから。___」
微笑を浮かべながら、用具箱の蓋を静かに閉める。
「……、」
九條は黒羽に対して、内心思うところはありながらも
「俺には…心配掛けてもいいんだ、」
黒羽の顔を覗き込みながら、冗談混じりの笑みを浮かべ
「アンタは…あれですよ、お互い様ですから。」
「馬鹿で危なっかしくて…騙されやすいアンタに、当時私がどれ程振り回されたと思ってるんですか。」
「ついさっきも…頭打って血だらけでしたし、本当気を付けて下さいよ。もっと周りをよく見て___」
黒羽が叱るような口調でそう告げる中、
「…紫、意外と俺の事心配してくれてたのか…。」
九條は何やら嬉しそうな様子で、微笑んだ後
「紫、今日此処に泊まるんだろ?だったら…そろそろご飯にしようか。今から俺が何か作るよ、」
そう告げると同時に、九條はその場へと立ち上がる。
「包丁すら握った事ない人が…何言ってるんですか。無理しなくていいですよ、」
「(それに…どうせ食べても、また吐くだけ___)」
九條の言葉に返答すると同時に、黒羽がそんな事を思う中
九條は黒羽と目線を合わせるようにして、かがみ込んできたかと思えば
「紫、何だったら食べれる?…消化に良さそうな物の方がいいよね。」
「それと…その化粧も落としていいよ。実家だと思ってゆっくりしていってよ、___」
穏やかな笑顔を浮かべながら、そんな言葉を黒羽へと投げ掛け
対する黒羽は、少し驚いたような表情を浮かべた後
「…そうですね、量は少なめで…お願いします…。」
呟くようにして、九條の言葉に返答し
「分かった、じゃあ紫は此処で待ってて。」
九條はそう言って襖へと手を掛け、一旦部屋を後にする。
「(頭空の癖に…洞察力はあるんですよね…。)」
部屋へと残った黒羽が、ふとそんな事を思っていると
「___ッ、痛ッ!」
数分もしないうちに、台所からは大きな物音と騒がしい声が聞こえ
「(本当…手の掛かる人ですね…。)」
黒羽は内心溜息を吐きながらも、部屋を出て台所の方へと向かっていった。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時