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そう言って、黒羽が薬を手渡すと
「……」
男は無言でそれを受け取り、一気に水で流し込んでいく。
「…気持ち悪い…、…。」
男が布団の上で蹲る中、黒羽は散らかった部屋の中を隅々まで見渡し
「アンタ…女中雇ったとか言ってませんでした?何ですか、この有様。」
溜息を吐くと共に、呆れたような視線を男へと向けると
「つい最近まで…居たけど…、逃げられた…。」
男はズキズキと痛む頭を抑えながら、黒羽の問いに対して言葉を返す。
「…どうせアンタが、女中にしつこく付き纏ったんでしょう。向こうは仕事で来てるんですから、ある程度線引きはして下さいよ。」
「いや…でも、結構タイプだったから…。押せば上手くいくかなって…」
「上手くいく訳ないでしょう、この世の何処に…アンタみたいな男と付き合いたい女がいるんですか。」
「アンタは一回死んで、生まれ変わりでもしないと結婚は出来ませんよ。来世に期待ですね、」
床へと散らばった書籍を手に取りながら、黒羽が男へと声を掛ける中
「……、」
先程まで寝込んでいた筈の男は、ゆっくりと身体を起こしたかと思えば
「じゃあ…紫が俺と結婚___」
「嫌ですよ、アンタと私じゃ一回り近く歳離れてるでしょう。」
そんな提案を黒羽へと投げ掛けるものの、その提案は即座に却下され
「それに…アンタが私の事、そういう目で見れないの知ってるんですからね。」
黒羽は書籍を棚へと戻しながら、そんな言葉を男へと投げ掛ける。
「……」
その言葉を聞き、男は口を閉ざしたかと思えば
「…うん…、そうだった…。」
視線を下へと落としながら、ポツリとそう呟いた。
___ある程度、男の部屋を片付け終えた黒羽は
「この感じだと…どうせ他の部屋も散らかってるんでしょう。」
「…私が片付けとくんで、アンタは酒抜けるまでそこで大人しく寝てて下さい。」
男へと背を向け、その場を後にしようとすると
「…紫 、」
自身の名を呼ぶ声が、聞こえてきたかと思えば
「 おかえり 」
男は穏やかな表情を向けると共に、黒羽に対してそんな言葉を投げ掛け
「今更…それ言いますか、」
対する黒羽は、少し呆れたような視線を向けながらも
「只今戻りました、…師匠。___」
男の言葉に返すようにして、そう呟いた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時