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この場を立ち去るよう、促してはみるものの



「足、大丈夫かァ」



「(…無視しやがった、)」



アイツはその場から動く事なく、私の足元へと目を向ける。



「まァ…呼吸である程度止血はしてるんで、大丈夫ですよ。」



「包帯が手元にあれば、巻いておきたいところではあるんですけど…。生憎、持ち合わせてない___」



すると、私の言葉を遮るようにして



ビリっと勢いよく何かを破る、音が聞こえてきたかと思うと



「…足、みせろォ」



アイツは自身の羽織の一部を包帯代わりにし、



「(相変わらず…この人は…、)」



器用にそれを私の足へと巻いていく。



処置を終えたところで、私はアイツに対して



「…お礼は言いませんよ。アンタが勝手にしたことですから、」



そんな言葉を投げ掛けると、アイツは「あァ」と返答した後



『寒くないか』『腹は減ってないか』などと…いちいち聞いてくる訳で



「(…クソうざ、)」



内心舌打ちをしながら、アイツの言葉に返答していく。



「アンタ…もしかして長男ですか。」



その後、アイツに対してそんな話題を持ちかけ



「そうだけどよォ…、何でンな事聞いてくるンだァ」



「…絶対アンタ、弟や妹から煙たがれてたでしょう。過保護感出てますよ、」



「まァでも、弟や妹がいたら…必要以上に構いたくなるものなんですかね…。___」



そう告げると同時に、遠い昔の記憶が頭の中へと思い起こされ



「私も…本当はアンタと同じ、長女になる予定だったんですよ。」



「けれど、鬼に襲われたあの日…母親と共に、まだお腹の中にいた妹を殺されました。」



「だから…蝶屋敷に迎えられた当初は、カナエさんとしのぶさんが羨ましかったですよ。一度でいいから…『姉さん』って呼ばれてみたかったなって…。」



そこまで告げた後、ふと我に帰り



「(何で…今更、こんな話…。)



「(カナエさんやしのぶさん、匡近にでさえ…してこなかった話なんですけどね…。)」



目の前のアイツに、この話を打ち明けてしまった事に疑問を抱き



「すみませんね、こんな話…聞かなかった事にしていいですよ。」



そう言って話を終わらせ、過去の記憶に蓋をする。



「……」



黙って話を聞いていたアイツは、私の方へと静かに手を伸ばしたかと思えば



「お前の家族の仇も…俺がとってやらァ、」



そう言って慰めるかのようにして、優しい手付きで私の頭を撫でる。

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作者名: | 作成日時:2023年11月1日 0時

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