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手渡された薬を抱えながら、風屋敷へと戻る道中
『また…アンタから誘ってくれるの、待ってます。』
不死川の脳裏には、先程黒羽がみせた表情が目に浮かび
「……」
得体の知れない感情に、薄々勘付いてはいながらも
「(気のせい…だよなァ…)」
自身に言い聞かせるようにして、心の中でそう呟く。
その後、不死川は自身の屋敷へと戻り
脚へと巻いていた包帯を解き、薬の蓋を開けようとすると
「……血、?」
容器の底に、僅かな血痕が付着しているのが目に入る。
一方その頃、不死川と別れた黒羽は
「___っ、はぁ…」
血と共に先程口にしたもの全てを吐き出していく。
「(無理してまで…食べる必要ないんですけどね…。)」
そんな事を思いながら、血を拭う黒羽の脳裏には
『オイ、俺の分まで食うンじゃねェ…ったくよォ』
食事をする際、苛立ちながらも…微かに口元が緩む不死川の姿が思い起こされ
「は…っ、本当…タチの悪い…____」
渇いた笑みを吐き捨てると同時に、黒羽はふたたびその場へと蹲る。
吐瀉物を片した後は、自室の鏡へと目を向けて
「(…酷い顔…。)」
白粉と紅を手に取り、慣れた手付きで化粧を施し
「(まァ…こんなもんか、)」
自身の見てくれを偽り、曲がった髪飾りを元の位置へと戻す。
その後、黒羽のもとにはアオイが訪れ
「紫、今日カナヲいないから…代わりに回復訓練手伝って!」
半ば強引に連れられ、訓練所へと向かう途中
「紫、最近元気そうで…安心した。」
アオイは安堵の笑みを浮かべながら、黒羽に対してそんな言葉を投げ掛ける。
「少し前まで、全然ご飯食べてなかったし…睡眠もあまり取ってなかったでしょ?」
「でも最近は…顔色もいいし、ご飯もよく食べるしで___」
「……」
アオイがそう話す中、黒羽は一瞬視線を伏せながらも
「心配かけてごめん、でも…もう大丈夫だから。」
微笑を浮かべ、アオイの言葉に対してそう返す。
「(今度は…誰にも気付かれないよう、上手くやるから…。___)」
事実は決して告げる事なく、内に秘め
「…アオイ、今日の夕飯は肉がいい。野菜要らない、」
「ダメ、野菜も食べて。アナタはただでさえ好き嫌い多いんだから。____」
そんな会話を交わしながら、黒羽はアオイと共に訓練所へと向かっていった。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時