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「だから、カナヲには…たくさん稽古をつけてあげて下さい。カナヲが花柱にでもなれば、蝶屋敷はしばらく安泰ですね。」
軽快な口調で黒羽がそう話す中、
「……」
胡蝶は黒羽の方へと目を向けたかと思えば、
「そういえば紫、あなた…先日の私の稽古サボりましたよね?」
「一体何処で、何をしていたんでしょうか?」
静かな圧を放ちながら、笑顔で黒羽のもとへと迫る。
対する黒羽は、ぎくりと肩を揺らしながらも
「過ぎたことは…いいじゃないですか、次はちゃんと参加しますから…ひとまず団子でも食べて落ち着いて下さい。」
咄嗟に団子を手に取り、それを胡蝶へと差し出す。
胡蝶は差し出された団子を受け取り、
「そうですね…話は屋敷に戻ってから聞くとします。」
「それまでの間、私が納得する言い分を考えておいて下さいね。」
ニコッと微笑みかけた後、団子を口へと含む。
黒羽が決まりの悪そうな表情を浮かべる中、
「(……、)」
胡蝶は団子を頬張りながら、先程黒羽が告げた言葉を思い出し
「(私が…あなたの師でいられるのは、あとどれくらいなんでしょうね…。___)」
僅かに視線を伏せながらも、手に取った団子を全て平らげ
「では、そろそろ…戻りましょうか。」
甘味処を後にし、黒羽と共に蝶屋敷へと帰宅した。
***
帰宅後、黒羽は胡蝶から数時間程の説教をくらい
「(次は…絶対稽古行こう…。)」
疲れ切った様子でそんな事を思っていると、
廊下を歩く途中、アオイと出会し
「あ、紫!これ…あなた宛の手紙。」
「見た事ない名前の人だけど…この人、紫の知り合い?」
見慣れない差出人の名前に目を向けながら、アオイがそう尋ねると
「まァ…そんな所、」
黒羽はそう告げると同時に、封を開け
「……」
手紙の内容に一通り目を通し、同封されていた写真へと目を向ける。
その後、黒羽は目を通した手紙と写真をアオイに押し付け
「これ、燃やしといていいから。」
「え…燃やしといていいって…、紫___」
アオイの言葉を待たずして、自室の襖を閉めた後
「……はぁ、」
何やら面倒臭そうに、溜息を溢しながらも
「(一応、返事出しとこ…。)」
棚から便箋を取り出し、手紙の返事を書き始めた。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時