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その言葉に黒羽の身体がピクリと反応するものの、
「…すみませんね、だとしたら今日の診察は苦痛だったでしょう。」
「次からはアンタの診察、担当しませんので…師範がいる日にでも診て貰って下さい。」
何事もなかったかのような顔で、黒羽が淡々と話す中
玄弥は慌てた様子で口を開き、
「え、いや…あの、今は鬼化してる訳じゃないので…苦痛だとかは、全く思ってないです…。」
「ただ…以前お会いした時より、花の匂いがはっきりしてるというか…俺の気のせいかもしれないんですけど…。」
「……」
その言葉を受け、黒羽は一旦口を閉ざしながらも
「玄弥さんは…いつまで、鬼を喰べ続けるつもりでいますか。」
重たい口を開き、目の前の玄弥に対してそんな問いを投げかける。
「え…、」
唐突なその問いに、玄弥は一瞬戸惑うような様子を見せながらも
「俺は…呼吸を扱える才能が無いので…、鬼殺隊であるうちは、当分鬼喰いを続けるつもりでいます…。」
黒羽の問いに答えるようにして、そう言葉を返す。
対する黒羽は玄弥の言葉を受け、少し間を置いた後
「仮に…その代償として、人でいられなくなったとしても…アンタは鬼喰いを続けますか。」
先程の問いに重ねるようにして、新たな問いを玄弥へと投げ掛ける。
黒羽は玄弥の答えを、ただ黙って待ち続けていると
「……、」
玄弥は少しの沈黙の後、静かに口を開き
「たとえ…俺自身が人でなくなったとしても…、俺は…この能力で皆を…大切な人を、護りきる事が出来れば…それでいいと思ってます。」
「俺は…自分の事よりも、優先したい事が他にあるので…その為であれば、俺は…何だって出来ます。」
いつになくはっきりとした口調で、黒羽の問いに対して言葉を返す。
黒羽は玄弥の返答を受け、微笑を浮かべた思えば
「私も…アンタと同じですよ、」
「自らを犠牲にしてでも…護りたいものが、そこにはありますからね…。」
呟くようにして、率直な思いを告げた後
「アイツより…アンタの方が、気が合いそうですね。」
黒羽は付け足すようにして、そんな言葉を玄弥へと投げ掛ける。
「アイツ…？」
その言葉に、玄弥が不思議そうな表情を浮かべる中
黒羽は咄嗟に口を開いて
「あァ…気にしなくていいですよ、こっちの話なので。」
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作者名：雫 | 作成日時：2023年11月1日 0時
