117 ページ20
辿り着いた部屋の中には、隊員が映った写真が複数壁へと掛けられており
『(…匡近…、)』
その中には朗らかに笑いながら、不死川の肩を抱く青年の姿と
少し気恥ずかしそうな様子ではありながらも、青年と笑い合う不死川の姿があった。
『……』
黒羽がその写真を眺める中、家主も写真の方へと目を向けて
『いい写真…ですよね、』
『不死川様はこの方と任務に行かれる事が多くて、彼と親しげに話す姿を…私はよくこの目で見てきました。』
『…けれど、粂野様は…四年前に____』
後の言葉は告げる事なく、家主は視線を落とした後
少し間を置いてから、ふたたび口を開く。
『粂野様に先立たれてから、不死川様は…何かと一人でいる事が多くなって…、』
『柱になられてからは…以前よりも近寄り難いような雰囲気を出しているといいますか…、隊士達からは恐れられているようですし…。』
『不死川様は…本当は誰よりも、心の優しいお人なんですけれどもね…。』
家主はそう呟いた後、黒羽の方へと視線を移し
『だから…私は先程、不死川様と親しげに話すあなたを見かけた時、驚きましたよ。』
『あなたは不死川様に対して、恐れを抱く事もなければ…敬意を持って接している…という訳でもなく、』
『不死川様と対等に、良い関係性を築く事が出来ているのだと…そう思いました。』
穏やかな笑みを浮かべながら、そんな言葉を黒羽へと投げ掛ける。
「……、」
黒羽は一通り話を聞いた後、静かに口を開き
『…そうでもないですよ、私は…不死川さんに数々の重荷を背負わせてるみたいですから。』
『不死川さんが私に構う理由なんて、一種の罪滅ぼしみたいなものです。…それを良い関係性だなんて、呼んでいい訳が___』
黒羽がそこまで言い掛けた時だった。
『そうでしょうか』
家主は黒羽の言葉に被せるようにして、そう告げたかと思えば
『私は…あなた方の事情を深く知っている訳ではないですが…』
『不死川様があなたに向ける視線というのは、ただ単に…後ろめたい気持ちだけではないかと思いますよ。』
目の前の黒羽に対して、そんな言葉を投げ掛け
『(……)』
その言葉を受け、黒羽が考え込んだ様子でいると
家主は付け足すようにして、ふたたび口を開き
『不死川様だけでなく、あなたが不死川様に向けるその視線も……第三者の私から見たら、近い意味合いがあるように思いますけどもね…。』
117人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時