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それから二人は、店の外に置かれた縁台へと腰を下ろし
「不死川さんとは…よく此処に来られるんですか?」
注文を待つ間、胡蝶は黒羽に対してそんな問いを投げ掛ける。
「まァ…そうですね、あの人見かけによらず甘い物好きみたいなんで…割と来てますかね。」
その言葉に胡蝶は「そうですか」と返答した後、
「最近は不死川さんと仲が良いようで…何よりです。」
黒羽の方へと視線を向けると共に、ニコニコと微笑み掛ける。
「……」
対する黒羽は、少し不服そうな表情を浮かべており
「…言っておきますけど、私は好んで不死川さんと一緒にいる訳じゃないですよ。」
「ある人に頼まれたので…一緒にいるだけです、___」
___今から数ヶ月前、黒羽は不死川と共に…藤の家紋の屋敷を訪れた際
廊下を歩く途中、黒羽は家主に呼び止められたかと思えば
『黒羽様は…不死川様とお付き合いを始めて、どれくらいになられるんですか?』
突如、そんな問いを持ち掛けられ
『付き合い…ですか?』
『確か…六年くらいになるかと思いますけど。』
黒羽が指を折り曲げながら、そう答える中
『そうでしたか…!随分、長い事お付き合いされているようで…、』
『それで…告白はどちらから…?』
家主は興味津々な様子で、そんな問いを黒羽へと投げ掛ける。
『(あァ…そういう…)』
一方、黒羽は家主の誤解に気付きながらも
『…不死川さんからですね。「お前以外考えられねェ」と言われ、強引に唇を奪われました。』
特に訂正する事なく、家主の問いに対して言葉を返す。
『不死川様…意外にも積極的なんですね…!』
黒羽の話を聞き、家主は一人で盛り上がった後
ハッとした様子で黒羽の方へと視線を向けて、
『取り乱してしまい申し訳ございません…、不死川様のこういった話を耳にするのは何分初めてなもので…。』
そう告げたかと思えば、家主は穏やかな表情を浮かべながら
『不死川のお側にあなたが居てくださって…本当に良かった…、…。』
呟くようにして、そんな言葉を黒羽へと投げ掛ける。
『それは…どういう意味ですか、』
その言葉を聞き、黒羽がそう尋ねると
『……』
家主は少しの沈黙の後、黒羽に背を向けて歩き出し
黒羽は家主の後を静かについて歩き、家主が足を止めると同時にとある部屋の前で立ち止まる。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時