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___後日、蝶屋敷にて
「では、お大事になさって下さい。」
診察室ではにこやかに微笑みながら、隊士を見送る胡蝶の姿と
「…師範、此処らの薬品入れ替えていいですよね。」
すぐ側で戸棚を整理する黒羽の姿があり、
「そうですね、所々変色も見られますし…新しいものに入れ替えましょうか。」
来客が途切れた所で、胡蝶も黒羽と共に薬品の整理を行っていく。
全て片付いた所で、黒羽は胡蝶に対して
「師範、休憩がてら近くの甘味処にでも行きませんか。」
「何かあればすぐ戻って来れますし…少しくらい抜け出しても大丈夫でしょう。偶には一緒にお茶でもどうですか、」
そんな提案を胡蝶へと投げ掛け、
胡蝶は少し考えた後、黒羽の方へと視線を向けて
「あなたと私が不在になったら、アオイ達の負担が増えるでしょう。…後でアオイに叱られるかもしれませんね、」
そうは言いながらも、胡蝶は黒羽と共に玄関の方へと向かい
「お土産に沢山団子買って帰りますから…大丈夫ですよ。」
黒羽は胡蝶の言葉にそう返しながら、屋敷の戸へと手を掛ける。
その後、二人は付近の甘味処へと辿り着き
黒羽が暖簾を上げ、中へと足を踏み入れると
「紫ちゃん、今日も来てくれたんだねぇ…!」
中からは人柄の良さそうな店主が出迎え、黒羽に対してそう声を掛ける。
「あら、今日はお兄さんじゃなくて…お姉さんと来てくれたんだねぇ。」
「それにしても…綺麗なお姉さんだこと、紫ちゃんはお兄さんよりもお姉さん似ね。」
黒羽の側にいた胡蝶を目にし、店主が微笑む中
「あの…毎度言ってますけど、あの人は兄じゃないですよ。他人です。言うなれば財布です、」
「それとこの方は…姉ではなく、私の恩師です。」
黒羽はそう言って、店主の言葉を訂正した後
「しのぶさんは…私が心から慕う、大事な人です。」
はっきりとした口調で、胡蝶を紹介し
「(……)」
その言葉を聞き、胡蝶が静かに黒羽へと視線を向ける中
黒羽は店内を見渡した後、胡蝶の方へと振り返り
「中は空いてなさそうなので…外でもいい__」
「…師範?どうかしました、」
黒羽がそう尋ねると、胡蝶は珍しく動揺した様子で
「あ…いえ、そうですね。外に…移動しましょうか、___」
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時