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その後、不死川は黒羽と共に食事をする中で
「…そう言えばよォ、」
何か思い出したかのようにして、口を開いたかと思えば
「最近、胡蝶の妹だとか神崎の様子…変じゃねェかァ」
唐突にそんな話を黒羽へと持ち掛ける。
「変…?」
「こう…何つーか、態度がよそよそしい感じがしてよォ」
「胡蝶の妹に至っては『考え直して貰えませんか』だとか、よく分かんねェ事言われたしよォ…。お前、何か知らねェかァ?」
そう言って、不死川が黒羽の方へと視線を向けると
「あれじゃないですか、アンタが私に求婚したから…二人とも戸惑ってるんですよ。」
黒羽は肉を口へと含みながら、淡々とした口調でそう告げる。
「はァ?求婚だァ…?」
その言葉に不死川が怪訝な表情を向ける中、
「アンタ、私に櫛くれたでしょう。男から女に櫛を渡すってのはあれですよ、一種のプロポーズみたいなものなんですよ。」
「生涯共にしたい相手に送る…特別な物です。そんな特別な物をアンタは意味も知らず私に送って…本当、馬鹿なお人ですよね。」
黒羽はもぐもぐと口を動かしながら、そんな言葉を不死川へと投げ掛ける。
「(そう…なのかァ…)」
その言葉を受け、不死川が決まりの悪そうな表情を浮かべていると
「別に…気にしなくていいですよ。アンタがくれたあの櫛に、深い意味なんてない事は知ってましたし…間に受けるだなんて事はないです。」
黒羽はそう告げたかと思えば、ふたたび鍋へと箸を付け
「仮に…そういった意味合いがあったとしても、私は生涯アンタの隣にいるだなんて事は…無理な話ですし。」
僅かに視線を落としながら、ポツリとそう呟く。
「……、」
その言葉を聞き、不死川の箸が止まる中
何かを察した黒羽は不死川と視線を合わせ、
「…心理的負荷が大きいって意味ですよ。アンタと生涯共にするよりだったら、腹切る方がマシです。___」
付け足すようにしてそう告げた後、黒羽は通り掛かった店の女を呼び止め
「あ、肉追加でお願いします。それと会計は…この人に付けておいて下さい。」
「オイ、ちょっと待てェ…俺に会計持たせンじゃねェ」
「せめてお前も半分払___」
不死川がそう告げる中、黒羽は頼んだ肉を箸で掴み
「無理ですよ、私…基本アンタといる時お金持ってきてないんで。」
「だから会計頼みますね、不死川さん。___」
ニコッと微笑み掛け、追加の肉を鍋へと放り込んだ。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時