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(No side)
___とある街中の食事処にて、
「…不死川さん、そこの肉取らないで下さいね。私が先に目付けてたんで。」
そこには、ひたすら肉を口へと運ぶ黒羽の姿と
「お前…肉しか食ってねェだろォ、いい加減その偏食直せェ」
軽く溜息を吐きながら、黒羽と食事をする不死川の姿があり
「つーかよォ…お前が肉ばかり食うせいで、俺の分ほぼ無ェンだけど…。」
目の前の黒羽に対して、不死川がそう声を掛けるものの
「まァ…私の方が若くて育ち盛りですから、仕方ないですよ。年寄りはしらたきでも啜ってて下さい、」
黒羽は何食わぬ顔でそう返しながら、ふたたび肉を口へと運ぶ。
「ふざけんな、誰が年寄りだァ…」
黒羽の言葉を受け、不死川が若干苛立った様子でいると
「全く…仕方ない人ですね、」
黒羽は一旦箸を止め、溜息を吐いたかと思えば
「食べ物の恨みは怖いと言いますし…少しくらいなら譲ってあげますよ。」
「ほら、口開けて下さい。」
箸で掴んでいた肉を不死川の方へと差し出す。
対する不死川は、訝しげな目を黒羽へと向けており
「(これは…絶対ェ罠だろォ…)」
「(俺にやると見せかけて、最終的には自分で食うつもりなンだろうなァ…。)」
不死川が内心そんな事を思っていると、
「…早く食べて下さいよ、腕疲れるんで。」
黒羽はそう言いながら、不死川の口元へと肉を持っていく。
「……、」
不死川は疑いながらも、黒羽の呼び掛けに応じるようにして口を開け
「美味しいですか、」
「…美味ェ、…。」
呟くようにして、黒羽の言葉に返答すると
黒羽はふっと微笑みながら「そうですか」と返した後
「…やっぱり肉は高いものに限りますね、店此処にして正解でしたね。___」
ふたたび鍋へと箸をつけながら、そんな言葉を不死川へと投げ掛ける。
対する不死川は、先程含んだ肉を飲み込んだ後
「(いつもみてェに…意地悪しねェンだなァ…。)」
ふとそんな事を思うと同時に、先程…微笑み掛けた黒羽の表情が思い起こされ
「……、」
心情には微かな揺れが生じるものの、
「(気のせい…かァ___)」
特に気に留める事なく、その後も箸を進めていった。
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作者名:雫 | 作成日時:2023年11月1日 0時