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私はカナエさんが握ってくれたその手を、握り返すことが出来ず



『…カナエさん、今私がやっている事に…何か意味はあるんでしょうか。』



言葉足らずな、曖昧な問いを彼女へと投げ掛ける。



カナエさんは目を丸くしながらも、静かに口を開き



『そこに意味を見出すか見出さないかは…紫、あなたが決める事。第三者に委ねるものではない、』



いつになくはっきりとした口調でそう告げた後、



私の顔を覗き込んだかと思えば、華奢なその手で私の頬を優しく撫でる。



『あなたはまだ若いし…賢い、だから焦る必要はないわ。』



『紫なら…いつかきっと見つけられる筈よ。あなたなりの意味と、そこにある何かしらの価値を。___』



そう言って微笑んだ後、カナエさんに手を引かれるがまま部屋を後にし



月明かりが差し込む廊下を歩きながら、



『ほら見て、紫。今日は満月よ、蝶々も沢山飛んでるわ。』



カナエさんが指差した窓の外へと、静かに視線を移す。



…満月の下、可憐に舞うその蝶たちは



大きな羽を羽ばたかせながら、雲一つない澄みきった夜空へと駆けて行く。



その様子を眺めているうちに、自室の前へと辿り着き、部屋へと足を踏み入れたところで



カナエさんは何か思い出したかのような表情を浮かべて、此方へと視線を向ける。



『そういえば…勉強の方は順調かしら?何か分からない事があれば、いつでも聞きに来ていいのよ。』



笑顔でそう声を掛けるカナエさんの表情に返すようにして、私は微笑を浮かべ



『…はい、順調です。お気遣いありがとうございます。____』



丁寧な言葉でそう返し、カナエさんが立ち去った後、静かに部屋の襖を閉めた。
















『……、…____』



その後、机上へと転がる瓶を立て直し



開いたままの書籍を手元に寄せ、印を付けたところから、ふたたび目を通し始める。



静まり返った部屋の中では、ページをめくる音と鉛筆を走らせる音だけが響き



一区切りついたところで、一旦書籍を閉じ、机上に置いていた瓶を手に取る。



しのぶさんから習った方法で、薬を調合し



試行錯誤しながら、いくつかの試作品を机上へと並べた後は



『(そろそろ…食事の準備しなきゃ…、___)』



身支度を整え、日の光が差し込む部屋を後にする。



『(…眠、)』



欠伸をしながらも台所の方へと向かい、



アオイと共に朝食の準備を進め、いつも通り療養する隊士たちの部屋を回っていった。

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作者名: | 作成日時:2023年9月18日 10時

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