89 ページ40
少し呆れた様子で声を掛けながらも、
不死川はその状態のまま、報告書を全て読み終えた後
「___紫、行くぞォ」
立ち上がると同時に、床へと倒れ込みそうになる黒羽を片手で支え
「…あァ…はい、…」
黒羽はようやく重い瞼を開け、ゆっくりとその場へと立ち上がる。
部屋を後にし、黒羽が欠伸をしながら先を歩く中
不死川は黒羽の髪へと挿しこまれた、蝶の髪飾りへと目を向けて
「(…曲がってンなァ、___)」
そんな事を思いながら、髪飾りに触れようとしたその時。
パシッと手を払い除ける、鋭い音が響いたかと思うと
黒羽は何事もなかったかのような顔で、不死川の方へと振り返り
「曲がってました?これで…どうですかね、」
自身の手で髪飾りの位置を直し、不死川にそう問いかける。
即座に手を払い除けられた不死川は、若干の苛立ちを抱えながらも
「…良ンじゃねェの、」
吐き捨てるようにして一言返し、伸ばした手をもとの位置へと戻す。
黒羽はふたたび前を向いて、歩き始めたかと思うと
「…今ので目覚めましたよ、害あるものから身を守る…人間の防衛本能って凄いですね。」
淡々とした口調でそう告げながら靴を履き、屋敷の戸へと手を掛ける。
「(…害って…、コイツ…。)」
黒羽の言葉に、不死川の苛立ちが募り始める中
任務へと向かう二人の前に家主が現れ、
「不死川様、黒羽様…此度の任務、お気を付けて行って行ってらっしゃいませ。」
穏やかな口調でそう告げた後、二人に対して丁寧に頭を下げる。
そんな家主に対して、不死川が「あァ」と返答する中
黒羽は何か思い出したかのようにして、口を開き
「あ…そういえば、昨日頼まれた件なんですけど……そもそも私はこの人の伴侶でも何でもないので、無理です。すみません、」
家主の方へと視線を向けて、そんな言葉を投げ掛ける。
「そうでございましたか…、私はてっきり…不死川様に良いお人が出来たのかと…。」
家主は黒羽の言葉を聞き、一瞬肩を落とした後
「いや、しかし…今後、そういったご関係になる可能性も___」
先程までとは打って変わった様子で、目を輝かせながらそう告げるものの
「無いです」
黒羽にきっぱりと否定され、家主はふたたび肩を落とす。
その後、黒羽は訂正するかのようにして
「まァでも、期限付きで良ければ…引き受けても良いですよ。」
66人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雫 | 作成日時:2023年9月18日 10時