42.三途の川から帰還 ページ42
[A]
なにか暖かいものに包まれてる。
居心地が良くて、離れたくないような感覚だ。
意識がはっきりしてきて、
目が覚めると誰かの腕の中にいることが分かった。
ゆっくりと顔を上に上げると、
寝ながら抱きしめてくれていたのは
ジュダルだった。
あれ、私なんでここに………
そうだ。
あの皇子に殺されかけてたところに
ジュダルが助けに来てくれたんだ。
私、あんなに出血したのに
生きてる……
手足からの痛みもない。
きっと誰かが治癒魔法を使ってくれたんだ。
今まで何度か三途の川を渡りかけたことは合ったが、また戻ってこれたのか。
ジュダル「ん…………A!?
意識が戻ったのか!!」
起こしてしまった。
A「お陰様で……助かったみたい。
ありがとう、ジュダル。助けてくれて。」
ギュッ
……………!?
ジュダルに強く強く抱きしめられた。
ジュダル「本当に心配したんだからな。
どれだけ心配かけたと思ってんだよ。」
彼の腕の中で、
どんな表情をしてるのか見えないけど、
本当に心配してくれてたことだけは分かる。
A「ごめんね、ほんとに…」
改めて自分が本当に危険な状態であったことに
理解しだして、少し怖くなってきた。
ジュダル「泣いていい。見えてないから。
気にせず好きなだけ泣け。」
怖かったはずなのに、
涙が出ない…。
A「私、剣を握った時から
泣かないと決めていたの。
最後に泣いたのは母上が殺された時。
泣いたらすぐに崩れそうになるから、
それ以来泣いたこと無かったんだ。
姉を殺した時でさえ。
だから……
どうすれば涙が出るのか思い出せないんだ…。
おかしいよね。こんなの。」
ジュダル「あぁ、おかしい。
でも、今までずっと耐えてきたってことだ。
それを否定しない。
それに泣けなくても…
こうしてれば少しは安心するだろ?」
もっと強く抱きしめてくれた。
ジュダルの優しさが凄く伝わる。
A「ありがとう。
でもなんで…こんなに優しくしてくれるの…」
ジュダルに優しくされる度、助けられる度、
鼓動がうるさくなる。
こんなことなった事ない…
初めてだ。
A「これ以上、私を困らせないでよ…。」
そう言って自分から
ジュダルの胸板に顔を寄せた。
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作者名:花月 | 作成日時:2020年9月23日 3時