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episode7 ページ9





『あ……』


昇降機(エレベーター)を降りて直ぐ、
此方に向かって歩いてくる中也さんを見つけた

半年前と全く変わった様子がないその姿を見て ホッと安堵の息を漏らす


『中也さん!』


そう云って駆け寄ると、中也さんは名前を呼ばれたことに一瞬驚いたような顔をしたが 私の姿を認識すると ふっと頬を緩ませた


「久しぶりだな、A」

『お久しぶりです、中也さん。ご無事でなによりです』

「小競り合いで怪我負う程俺は柔じゃねぇよ。…っても、だいぶ手こずっちまったがな」

『ご無事でいらっしゃるのなら、それだけで十分です。…でも、連絡が全く取れなかったので心配しました』


少し拗ねたような声色になったのに気付いたのか、中也さんは視線を私から外して気まずそうな顔をする

「あー…、その、携帯拠点に置きっ放しにしちまったから…。首領(ボス)には一応伝えておいたんだがな」

でもまぁ、無駄な心配かけて悪かったな


そう云って中也さんは自らの手を私の頭に添えた

あの糞ロリコン、と喉まで出かけた言葉は其れにより直ぐに引っ込んだ。
我ながら、単純すぎる……


けれど 半年振りのその手に、温もりに、大きな安心を感じるのは事実。



暫くこのままで居たいなぁ



しかし そんな願い虚しく、温もりは私の頭を離れていく
名残惜しく感じながらも顔を上げると 中也さんはそう云えば、と怪訝そうな表情をしていた


「A、太宰に会ったか?」

『…いえ、会ってませんけど』


一瞬、太宰さんとの取り引きの件がばれたのかと思い死を覚悟したが 中也さんの表情からするに単なる疑問であり、確信はないようだ


中也さんは昔から私と太宰さんがつるむのをひどく嫌う
理由は私達がつるむと中也さんにとって碌な事がないから。


中也さんに嘘をつくのは大変心苦しいが、私は何処ぞの死にたがりと違ってまだ生きたいし、何よりポケット内にある大事な宝物を失うわけにはいかない


『太宰さん、地下牢で拘束されてますよね?私 彼処へ行く理由ないですから』

何も知らないという風にもう一度否定すると、中也さんはうっ、一瞬詰まったものの安心したように小さく息をついた


「そうだよな、会ってないならそれでいい。…変な事聞いて悪かったな。じゃ、俺報告書仕上げねぇとだから」


じゃあまた、とヒラヒラと手を振り自室へ向かう中也さんの背中を見送りながら 私はホッと何度目かの安堵の息をついた

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きなこもち(プロフ) - わたあめさん» ブックマンJr.放置していてすみません。最近自分でも迷走しててどこに突っ走っているのかわからなくなり放置状態にしてました。真逆更新待って下さる方がいるとは思わず・・・。でも、とても嬉しいお言葉です!頑張って今月中に更新します!! (2017年8月17日 7時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ごめんなさい!生意気言って,,, (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - ブックマンJrの少女も更新して欲しいです!! (2017年8月16日 21時) (レス) id: 8f5f7e0649 (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 赤雲蒼雲さん» 赤雲さん、ありがとうございます!とっても励みになりました!!更新とってもノロノロですが、これからも面白いと思って頂けるよう頑張ります! (2017年4月22日 19時) (レス) id: d6a64bf75c (このIDを非表示/違反報告)
赤雲蒼雲 - 面白かったです!更新頑張ってください! (2017年4月17日 11時) (レス) id: 08e4520087 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこもち | 作成日時:2017年1月2日 21時

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