祈り ページ2
目、鼻、口、全てのパーツが黄金比のごとく整った顔、鮮血のごとく紅き髪は、暗闇でも分かるほど美しかった。
これは、俗に言う「イケメン」と言うやつだろう。
あまりの美しさに、言葉を失う。
「あんまり人の顔ジロジロ見るな気色悪い。」
ピクリとも顔を歪ませず、淡々と放つ言葉。
その言葉でようやく私は我を取り戻した。
「な、何よ!失礼ね。別に誰もアンタの事なんか見てないわよ!」
もっとマシな言い訳は出来なかったのだろうかと、心の中で自分に呆れる。
「なら何を見てたんだ?こんな場所で、虚空でも見つめてたって言うのかよ。そっちの方が気色悪いわ。」
口角を上げ、バカにしたように言葉を返す。
ぐうの音も出ない私は、ただ怒ることしか出来なかった。
最悪、最悪、最悪!!
こんな不快な夢、初めて見た!!
もういい。
別の夢に行ってやる。二度とこんなとこ来るものか!!
私はふいっと顔を逸らし、意識を集中させる。
しかし、いくら気を集中させても、何も起こらない。
「あれ、どうして?」
もう一度、もう一度と、何度も繰り返す。
だが、何をしても戻れない。
いつもなら、気を集中させればふわっと言う感覚とともに戻れたはずなのに、今はその感覚さえもない。
ただ重力に従っているだけ。
「どうして、どうして戻れないの?!」
悲痛に木霊する叫びは、ただ私に現実を突きつけるだけ。
私は頭を抱え、その場にしゃがみこむ。
一体全体、何がどうなっているのだろうか?
こんなこと、ただの一度もなかったのに。
夢に、夢ごときに、私は閉じ込められたというのだろうか。
ありえない。
だって、これは所詮夢。
私の意のままに、自由に操れる私だけの世界。
それなのに、そんな夢に私が囚われる?
冗談じゃないわ!
なんとかしなきゃ、なんとかしなきゃ。
でないと、私の身体は…!!
その瞬間、ふと意識が飛ぶ感覚がした。
嗚呼、やはり所詮は夢。
私が思えば、簡単に戻れるんだ。
感覚がもうない。
意識を手放す時、私は祈りを込めた。
「願わくば、次目覚めた時は、現実世界でありますように。」と。
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作者名:作者A | 作成日時:2022年9月27日 13時