叶わない45 ページ9
“午後の6時頃ならいい。その後フジが来るから荷物置いたらすぐ帰ってな”
涙でその文章が滲み始める。
因みに、翼くんに告白されたあの後は、すぐさま彼から離れて返事は今度でいいかと聞くだけ聞いて、そのまま泣きながら帰った。
怖かった。男の人の力ってあんなに強いんだって、すごく怖くなった。
キヨ兄に会えるから、それで元気になれるかなと思って、通知にため息をつかずに済んだのに内容を見たらこれだ。
『…私、何かしたのかな』
そう呟きながら、キヨ兄の家へ行く準備を始めたのだった。時計は5時半を指していた。
_______
重苦しい気持ちでキヨ兄の部屋のインターホンを押す。
少しして、がちゃりと鍵が開く音がした。知らず肩に力が入っていて、深呼吸をした。
『…あ、ごめん忙しいのに』
キヨ 「ん、こっちこそ態々悪いな。じゃあ荷物貰う」
『……うん』
キヨ兄に荷物を渡すと、キヨ兄は私を玄関に入れてくれて、自分はリビングの扉を開けて荷物を置きに行った。
この重苦しい空気を何とかしたくて、そう言えばあの週末のことが思い浮かぶ。
四人で何してたの、なんて聞けば柔らかくなるかなと思って。
『そう言えば、先週の週末にあのお店にいたよね？四人で何してたの？』
ふふっと笑いながらそう聞けば、キヨ兄がリビングから帰ってきて、
キヨ 「…あ？」
なんて、低い声で言った。
今はそれすらも怖くて、引き攣った笑顔で続ける。
『私あの時キヨ兄たちのこと見つけてたんだよ、隣りに___』
そこまで言った時だった。
キヨ兄の腕が伸びてきて、私の口を塞いだ。
ついで、どんとドアに押し付けられる。
キヨ 「A、黙って」
想い人とこんなに顔が近付いたのに、全身が暑くなるどころか血が引いていく。
怖くてかたかたと震えて、目を見開いてキヨ兄を見詰めていると、キヨ兄は顔を歪めてため息をついた。そして、
キヨ 「…そろそろフジ来るから。…後、当分忙しいから連絡取れねぇかも」
私の顔から手を離してリビングへ消えて行ってしまった。
そして、こういう時は見たくないものを見てしまう。
綺麗な部屋のカーペットに無造作に転がった花形の髪留め。
『…っ……！』
頭が真っ白になった。
鼻の奥がつんとして、視界が大きくぼやける。瞬時に下瞼のダムが決壊して、ぼろぼろと涙が溢れてくる。
見てしまった。キヨ兄に彼女がいる証拠。見てしまった。
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蘇澳(プロフ) - りぃ@l」ω=さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけてとても励みになりました^^*更新頑張りますのでこれからも末永くよろしくお願いします！ (2020年3月2日 21時) (
レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ@l」ω=(プロフ) - 一気に読ませていただきました！すっごく面白いですー！キヨさんのこと、もっと好きになっちゃった…笑これからも投稿楽しみにしてますね！早く続き読みたいー (2020年3月2日 21時) (レス) id: b3c6beb7e3 (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - しまちゃんさん» コメントありがとうございます！いつも皆さんに楽しんでもらえているか心配だったので良かったです！更新は変わらず遅いかと思いますが定期的に行うようにしますので、これからもよろしくお願いします！いつも読んでいただいてありがとうございます！ (2020年2月29日 22時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
しまちゃん(プロフ) - 初めて感想失礼します！楽しく読ませて頂いてます！次どんな展開になるのか楽しみで毎度読むのにワクワクしてます！待ち遠しくて最初から何回か読み返したりしました、、！ご無理のないよう、素敵な小説更新するの楽しみにしてます！ (2020年2月29日 20時) (レス) id: d2a5bc168d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蘇澳 | 作成日時：2020年2月13日 20時
