朝 ページ18
Aside
「ふ………ぁ」
と欠伸を押し殺しながらボールを蹴っている私にタツヤ先輩が声を掛ける。
「大丈夫？寝不足？」
「ちょっと、夜更かししちゃって」
結局あの後、一星のことが気になって中々寝付けなかったし。
「そっか。韓国戦では活躍したもんな」
わしゃわしゃと頭を撫でて「偉いぞ〜」と笑いかけてくる。
「ちょ、ちょっと」
「ああ、ごめん。女の子は髪が命だもんな」
今度は乱した髪を撫でて整えてくれる。
その手は温かく、優しくてなんだか懐かしい気持ちになれた。
「可愛いな、Aは」
「からかわないでくださいよ………」
「本気だけど？」
タツヤ先輩は私の頭に手を乗せたままほんの少しだけ姿勢を低くして私と目線を合わせてくる。
そのエメラルドの瞳は澄んでいて、綺麗だ。
永世の貴公子と呼ばれるほどの美貌を前にかぁーっと顔が真っ赤になるのを感じる。
「そこ！練習中にイチャつくな！」
剛陣先輩が指摘するとタツヤ先輩は離れる。
「休憩にするぞー！」
という円堂さんの声が聞こえるとタツヤ先輩はまた近づいてきて、
「休憩だって。行こう」
手をしっかり握られて戸惑う。
私が戸惑っていると、タツヤ先輩はふわりと微笑んで指を絡めてきた。
「あのっ」
「Aがタツヤって呼んでくれるまで離さない」
指を絡めた手、いわゆる恋人繋ぎした手を私に見せつけるように手を上げると悪戯な笑みを浮かべる。
そしてそのままずんずん進んで行き、みんなが集まるベンチにやって来てしまった。
ドリンクを手に持つメンバーの視線が痛い、痛すぎる。
そんなこと気にもとめてない様子のタツヤはマネージャーにドリンクを受け取ると乾いた喉を潤し始める。
あちらこちらから「あいつら………」とか、「マジかよ」という声が聞こえてきて。
「…………ヤ」
「ん？聞こえない」
「タツヤ！！！」
私が声を大にして言い放つと、一拍置いてからタツヤは満面の笑みで答える。
「なーに？」
「離して…………」
声を振り絞るように言うと、ぱっと手は離れた。
「練習再開するぞー！」
「じゃ、お互い頑張ろうねA」
ヒラヒラと手を振りながら笑顔でコートに戻っていくタツヤ。
ちゃくちゃ恥ずかしかったし、あの貴公子フェイスを目の当たりにすると胸が高鳴って仕方ないが、これは不可抗力だろう。
ふとこっそりポケットに忍ばせているスマホが震えているのに気がつく。
そっと中身を確認すると、一星から�猴茲き瓩箸世院�
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作者名：くつる | 作成日時：2020年3月15日 3時
