検索窓
今日:12 hit、昨日:3 hit、合計:210,296 hit

*44 ページ46

「今回の馬陽攻防戦の指揮は昌平君の弟子が取った、と聞いた」

「うん、Aだよ」

あっけらかんと言う恬に王賁は眉をひそめる。

「ならば、王騎を死なせたのも.....」

「ああ、私の失態だ」

王賁からの鋭い視線に私は、目を逸らすこと無く答えた。

王賁が言いたいことは分かる。
だけど、王騎将軍に言われたのだ。泣くな、と。

だから、私は前を向いて生きるしかない。

「貴様のしたことはただの失態ではないぞ」

残された方が辛い思いをする。
なんならいっそ、私も馬陽で死ねばよかった、と何度も後悔した。

「分かっている。だから、私は必ず李牧を討つ。それだけだ」

キッパリと言いきった私に王賁はふん、と鼻を鳴らす。

そして、馬をUターンさせて、その場を去ろうとした時。

「きゃあぁぁっ!!泥棒!!誰か、助けてっ」

慌てて去っていく男が通ったと思えば、後ろから女の人の叫ぶ声が聞こえる。

恬の王賁は顔を見合わせ、頷きあう。

「Aはそこで待ってて。すぐ戻ってくるから」

「あ、こら。おいっ!」

呼びかける私を無視し、恬はそこら辺にいた馬にかけ登ると王賁と一緒に泥棒を追いかけていってしまった。

なんだ、仲良しじゃないか。あの二人。

普段はあんなに嫌がってるのに。特に王賁が。

恬が来た時の王賁の顔はミモノだ。


さて、私一人取り残されたわけだが、何をして暇を潰そう。

そうだ、貂に何かお土産でも買って行ってあげよう。

まだ、帰ってきてから貂と会ってはない。
蒙毅によると、戦から帰ってきた信のために久しぶりに会いに行ったらしい。

あんな落ち着きのない男のどこがいいのかは分からないけど、確かに一緒にいると元気をもらえる。

もしかしたら、政様も信がもつ人間性に惹かれたのかもしれない。


貂へのお土産を買うために私は近くに会ったキラキラと輝くアクセサリーを売る店の中を外から覗く。

「お嬢ちゃん、ちょっといいかい?」

不意に後ろから声をかけられ、私は後ろを振り向いた。

「ちょ.......」

その瞬間、いきなり腕を力強く引かれ、私は咄嗟のことに力いっぱい抵抗する。
それでも、やっぱり男の力には適わなかった。

「てn.......」

「おっと、叫ばないでもらおうか。いのちが惜しければな」

男は周囲からは見えないように私の背中に刃物を突きつけた。

まずい。かなりまずい。
私はそのままズルズルと路地裏へと連れていかれた。

*45→←*43



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (98 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
234人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - llmzさん» コメントありがとうございます!!蒙恬かっこいいですよね!珠海平原での蒙恬は鼻血ものです笑オチはまだ考えてないけど、考えときます笑これからもよろしくお願いします! (2019年7月6日 7時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)
llmz(プロフ) - 更新ありがとうございます。毎日楽しく読まさせて貰っていて、とても続きが気になります!蒙恬推しの私からするとオチは蒙恬がいいなと思います。てへ。お忙しいとは思いますが陰ながら応援しています。コメント失礼致しました。 (2019年7月5日 21時) (レス) id: 13d9da937b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 仙花さん» いえいえ、私もこの機会に中国史について色々振り返れたので、楽しかったです!このような機会をありがとうございました!! (2019年6月17日 16時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)
仙花 - 羋というのは楚の王族に使われる姓だと聞いたことがあったので、熊啓が名前なんだと私は解釈してましたが、熊という名前にそんな意味があったんですね。分かりやすい説明ありがとうございます。 (2019年6月17日 15時) (レス) id: 8f9569ed44 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 仙花さん» コメントありがとうございます!昌平君の本名についてはまた本文で言及させて頂きたいとおもうので、そちらを見ていただけると嬉しいですm(_ _)m (2019年6月16日 22時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年6月14日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。