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「ただいま、帰りました」

いつも通りの講義所からは私に対する同情の声が上がる。

私は周りの男達に苦笑いで返すと、先生の姿を探したが、先生はどこにもいなかった。

「恬、先生がどこにいるか知らんか?」

「先生?おかしいな、さっきまで、ここにいたんだけど.......」

首を傾げる恬に、私は ハッと思いつく。

そうだ、昔から先生は何かあれば見渡しの良い回縁(まわりえん)で景色を見ていた。

「え、ちょっと、どこ行くわけ?」

戸惑う恬を横目に私は回縁へと繋がる扉を勢いよく開ける。

「帰ったか」

その先にはこちらをチラリと振り返った先生が立っていた。

「恬、すまんが、席を外してくれないか?」

「分かったよ。じゃ、後でね」

講義所の方へと戻っていく恬の背中を見送りながら、私は先生の隣に並ぶ

「今回の事は先に蒙武から聞いた。辛い思いをさせたな」

先生は目線は景色の方を向きながら、私の頭に軽く手を置く。

また涙腺が緩みそうになるのに耐えながら、私はずっと黙ったままでいた。

「しかし、とりあえず 生きて帰ってきてくれたことは良かった。手は大丈夫なのか?」

包帯でグルグル巻になった私の左手を見ながら、先生のは心配そうに言う。

「こんなの、他の人に比べたらどうってことありません。それに、私は多くの命をこの手で殺めてしましました」

キュッと口を結ぶ私に先生はただ無言で景色を見つめる。

私の手の怪我は多くの人の命を奪った証だ。
それだけ、多くの矢を放ったということ。

それに、直接的ではないけど、わたしの策によって多くの人が死んだ。

.......やっぱり戦争は嫌いだ。

私は静かに目を伏せた。

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(プロフ) - llmzさん» コメントありがとうございます!!蒙恬かっこいいですよね!珠海平原での蒙恬は鼻血ものです笑オチはまだ考えてないけど、考えときます笑これからもよろしくお願いします! (2019年7月6日 7時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)
llmz(プロフ) - 更新ありがとうございます。毎日楽しく読まさせて貰っていて、とても続きが気になります!蒙恬推しの私からするとオチは蒙恬がいいなと思います。てへ。お忙しいとは思いますが陰ながら応援しています。コメント失礼致しました。 (2019年7月5日 21時) (レス) id: 13d9da937b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 仙花さん» いえいえ、私もこの機会に中国史について色々振り返れたので、楽しかったです!このような機会をありがとうございました!! (2019年6月17日 16時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)
仙花 - 羋というのは楚の王族に使われる姓だと聞いたことがあったので、熊啓が名前なんだと私は解釈してましたが、熊という名前にそんな意味があったんですね。分かりやすい説明ありがとうございます。 (2019年6月17日 15時) (レス) id: 8f9569ed44 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 仙花さん» コメントありがとうございます!昌平君の本名についてはまた本文で言及させて頂きたいとおもうので、そちらを見ていただけると嬉しいですm(_ _)m (2019年6月16日 22時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年6月14日 20時

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