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それから王騎将軍は私達に向けて色々なことを喋ってくれた。
蒙武に対しての激励とこれからの趙兵のこと.......。

「童 信」

王騎将軍は最後に信へと声をかけた。

「修行を付けてやる約束でしたね。見ての通り、無理になってしまいましたが。.............みんなと共に修羅場をくぐりなさい」


「素質はありますよ、信」


それが最後の言葉だった。そう言うと王騎将軍は信に自分が持っていた矛を渡し、息を引き取った。

辺りには悲しみと悔しさの嗚咽が広がる。


まるで魂が入っていない、ただの抜け殻のようになった私の頭を蒙武は優しく撫でた。

「だから俺は反対したのだ。ここに、お前のようなガキが来るべきではないと。あいつには俺から言っておく。.......お前のせいじゃない」

そう言い終えると蒙武はくるりと身をひるがえし、どこかへと行ってしまった。







数日後。

咸陽へと戻った私はゆらゆらと規則的に動く馬車に身を揺られて先生の学校へと帰ってきた。


何段もある階段を上ろうと、私は のそのそと その場を歩きだす。

その瞬間、ドンと言う衝撃と共に何かに包まれる。

私は慌てて顔を上げ、誰かに抱きつかれているのを理解する。

「久しぶりだね、A。今回の事は聞いた。お疲れ様」

昔から何度も聞き慣れているその声に私は不覚にもまた涙を流してしまった。

「ごめん、恬。もう少しこのままでいて欲しい」

私はしばらくの間、ギュッと恬に抱きつき涙を流し続けた。

優しくゆっくりと背中をさすってくれる恬に、私はふと思う。

昔からそうだった。
恬には、ここぞ という時に甘えてしまう.......




「いつまで抱きついているのだ、恬。離せ、暑苦しい」

落ち着いた私は、いつも通りに恬に声をかける。

「え、Aがそのままでいてくれ、って頼んだんじゃん。今日は珍しく素直だなって思ってたのに」

「うるさいっ!」

耳まで真っ赤になる私に恬は楽しそうに笑った。

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(プロフ) - llmzさん» コメントありがとうございます!!蒙恬かっこいいですよね!珠海平原での蒙恬は鼻血ものです笑オチはまだ考えてないけど、考えときます笑これからもよろしくお願いします! (2019年7月6日 7時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)
llmz(プロフ) - 更新ありがとうございます。毎日楽しく読まさせて貰っていて、とても続きが気になります!蒙恬推しの私からするとオチは蒙恬がいいなと思います。てへ。お忙しいとは思いますが陰ながら応援しています。コメント失礼致しました。 (2019年7月5日 21時) (レス) id: 13d9da937b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 仙花さん» いえいえ、私もこの機会に中国史について色々振り返れたので、楽しかったです!このような機会をありがとうございました!! (2019年6月17日 16時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)
仙花 - 羋というのは楚の王族に使われる姓だと聞いたことがあったので、熊啓が名前なんだと私は解釈してましたが、熊という名前にそんな意味があったんですね。分かりやすい説明ありがとうございます。 (2019年6月17日 15時) (レス) id: 8f9569ed44 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 仙花さん» コメントありがとうございます!昌平君の本名についてはまた本文で言及させて頂きたいとおもうので、そちらを見ていただけると嬉しいですm(_ _)m (2019年6月16日 22時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年6月14日 20時

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