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「随分遅かったですねぇ、A。軍議はもうとっくの前に始まっていますよ」
その日の夜。
私はすみません、と頭を下げ、王騎将軍の横へと入り込む。
卓上の地図を中心に数人の大男が取り囲んでいる所に堂々とはいるのは少し気が引けたからだ。
信と別れた後、前線の様子を見に行った私は、周りの人達の助けで何とか目的地の崖にたどり着いたものの、そこから帰る時に道に迷ってしまった。
本当に自分の方向音痴さを恨みたい。
「まあ、あなたの事ですから、道に迷っていたのでしょう。コッコッコッ」
笑う王騎将軍を横目に、私は先程からこちらを睨みつけてくる男に注視する。
「王騎、どういう事だ。ガキが1人紛れ込んでいるようだが」
「おや、そうですか?私にはそうは見えませんけど」
コッコッコッ、と茶化す王騎将軍に蒙武の怒りは最高点に上る。
「ふざけるな。お前もなにか言わんか、A!」
こちらにまで火の粉を散らしてくる蒙武に私は口元の布を取り、若干口角を上げる。
「バレていたのだな。お見事」
「お前のその顔はもう見飽きた。咸陽に帰れ」
「それは無理だ」
言い返す私に蒙武はもう無表情になり、もう言い返してこなかった。
蒙武は先生の幼い頃からの親友でもあり、恬の父親でもある為、昔からなにかと付き合いがあり、お世話になった.......と言うよりも、お世話をしてやった。
恬と私はなにかと蒙武にイタズラを仕掛けては、すぐさま先生の後ろへと隠れた。
そうすれば、蒙武はこちらに手を出してこないのだ。
その結果、私達にとって、格好の遊び相手だった蒙武は最終的にしばらくの間、先生の学校には寄り付かなくなった。
「王騎、俺はこいつに命を預けるのだけはゴメンだ。こいつをつまみ出せ」
「安心しろ、蒙武の分の軍略は練っていない」
「そういう問題ではない!」
さらに逆上する蒙武の様子に私は肩を竦め、王騎将軍へと助けを求める。
王騎将軍はその様子にただ、コッコッコッと喉を鳴らすだけだった。
「では、A。蒙武軍以外の策は練ってあるということですか?」
問いかけてくる王騎将軍に私はコクリと頷いた。
「よろしい、聞きましょう」
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涼(プロフ) - llmzさん» コメントありがとうございます!!蒙恬かっこいいですよね!珠海平原での蒙恬は鼻血ものです笑オチはまだ考えてないけど、考えときます笑これからもよろしくお願いします! (2019年7月6日 7時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)
llmz(プロフ) - 更新ありがとうございます。毎日楽しく読まさせて貰っていて、とても続きが気になります!蒙恬推しの私からするとオチは蒙恬がいいなと思います。てへ。お忙しいとは思いますが陰ながら応援しています。コメント失礼致しました。 (2019年7月5日 21時) (レス) id: 13d9da937b (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - 仙花さん» いえいえ、私もこの機会に中国史について色々振り返れたので、楽しかったです!このような機会をありがとうございました!! (2019年6月17日 16時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)
仙花 - 羋というのは楚の王族に使われる姓だと聞いたことがあったので、熊啓が名前なんだと私は解釈してましたが、熊という名前にそんな意味があったんですね。分かりやすい説明ありがとうございます。 (2019年6月17日 15時) (レス) id: 8f9569ed44 (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - 仙花さん» コメントありがとうございます!昌平君の本名についてはまた本文で言及させて頂きたいとおもうので、そちらを見ていただけると嬉しいですm(_ _)m (2019年6月16日 22時) (レス) id: 09e4b51586 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:涼 | 作成日時:2019年6月14日 20時